- 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト - http://manseiki.net -

「第12回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」出席のご報告

Posted By araihiro On 2015年11月27日 @ 1:39 PM In 会長メッセージ,協会の活動等,審議会 | No Comments

 平成27年11月26日(木)、「第12回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」が開催され、武久洋三会長が構成員として出席いたしました。議題は、下記の通りです。
 
 1.都道府県の地域医療構想の策定の進捗状況等について
 2.病床機能報告の改善に向けて
 3.都道府県における地域医療構想の策定後の取組について
 4.その他
 
◇武久洋三会長の発言
 参考資料4の2ページ「病床機能報告制度;平成27年度の変更点」に、急性期機能についての説明として「急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、医療を提供する機能」とある。しかしこれは「急性期」がどういった状態を指しているのかの説明にはなっておらず、結局「急性期」の定義はあやふやなままである。

参考資料4_2ページ.

武久洋三会長20151126 日本慢性期医療協会で6月に行った「医療施設・介護施設の利用者に関する横断調査」の結果では、療養病床でも3分の1の入院患者が2週間以内に退院、53%以内の患者が1ヶ月以内に退院していた。しかし急性期でも、特定除外の入院患者のように長い入院が必要なケースもある。
 
 状態が安定しなければいつまでも急性期とするのか、あるいは入院日数によって定義づけられるのか、それとも処置等技術的な面から考えるのか。同ページの回復期機能についての説明は「急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能」とあるが、これも結局は急性期の定義がはっきりしないので、一体いつの時点で急性期を経過したと考えればいいのかが分からない。「急性期」がカバーする範囲をどの範囲に設定するかという議論がなければ、いつまでもはっきりしないままである。
 
 平成19年10月のDPC評価分科会の資料の中で、急性期の定義として「急性期とは患者の病態が不安定な状態から、治療によりある程度安定した状態に至るまで」との記載があった。これでは極端な話、病態が安定しなければ何年経っても急性期ということになってしまう。平成19年にこの定義が出された時と今とでは状況がだいぶ変わっている。現在なら、急性期の期間の設定についてもう少し具体的な設定が可能だろう。これから10年先を見据えた形で定義をしていただかなくては、今後も混乱が続くと思われる。
 いずれにせよ、各区分の定義がきちんとなされていないと、議論も分析も進まないので、どの区分がどういった状態を示すのか、ある程度決めてからの議論にしていただければありがたい。

 また、4つの医療機能については医療関係者だけではなく住民にも周知し、こうした症状ならどこに行けばいいかということを知ってもらう必要があるだろう。患者や家族は、とりあえず急性期の病院に行っておけば安心と考えることが多い。だから何の情報もなければ、皆、急性期に流れていってしまう。急性期病院を受診するより、回復期や慢性期の医療機関の方が適切なケースはいくらでも存在する。地域住民、そして我々医療機関関係者側と、両方に適正な指導をしていただくようお願いしたい。

 病院では多くの場合、病棟ごとにある程度機能を分けている。機能を分けて考えるにあたり一番ややこしいのが、地域包括ケア病棟だろう。地域包括ケア病棟は、医療機関によって、急性期の要素が強い場合もあればリハビリテーションに特化していることもある。慢性期の病院で、急性期対応の病棟として使われることもある。地域包括ケア病棟が4区分のうちどれにあてはまるかという観点で考えると、なかなか一概に言い切れない。今後、多くの急性期病床が他機能へ転換していくことになるだろうが、大部分が地域包括ケア病棟を転換先に選ぶだろうということは容易に想像がつく。もはや4区分は、急性期、地域包括期、慢性期という3区分の分け方に変え、地域包括ケア病棟は地域包括期に入れてしまうのが、今後の状況に適した形ではないだろうか。

 地域医療構想区域は、もともとは医療介護総合確保区域であり、医療機関だけでなく介護施設や介護サービスも備え、医療・介護両方のサービスを総合的に提供できる区域となる予定であった。また、どの区域においても大体同じくらいの人口で設定するという想定を出していたにも関わらず、都道府県は二次医療圏域と全く変わらない圏域を医療介護総合確保区域に設定してしまった。極端な例だと、隣り合う二つの二次医療圏において、一方の医療圏が50万人、一方の医療圏が5万人といった場合がある。そのような現状で、はたして地域医療構想区域は有効に機能していくのか。

 当初、医政局は、構想区域の設定について、二次医療圏とは別の区域を設定してほしいと呼びかけていたように記憶している。それにも関わらずこの現状ということは、国の意向を都道府県が理解していなかったということだし、国も都道府県に対し何のフォローもしなかったということだろう。結果、病床機能が充分に整わず、介護サービスの提供も満足になされないような区域ができてしまえば、患者の流出は当然である。やはり、まずは国がある程度主導して、その上で都道府県にも汗をかいてもらうような形で進めていかなくては、実態に即した地域医療構想区域は生まれないだろう。

○第12回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000105253.html
 



Article printed from 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト: http://manseiki.net

URL to article: http://manseiki.net/?p=3666

Copyright © 2011 Japan association of medical and care facilities. All rights reserved.