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「第2回療養病床の在り方等に関する検討会」 出席のご報告

Posted By araihiro On 2015年9月10日 @ 9:44 PM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 平成27年9月9日、「第2回療養病床の在り方等に関する検討会」が開催され、池端幸彦副会長が委員として出席いたしました。今回の議題は、下記の通りです。

 1.療養病床の在り方等を検討する際の論点について
 2.有識者・自治体関係者からのヒアリング
 3.その他

◇池端幸彦副会長の発言
*資料2-1「医療療養病床(20対1・25対1)と介護療養病床との比較」には、医療療養病床20対1、25対1、介護療養型それぞれの機能がはっきり出たように思う。

 4ページ「医療区分」のグラフについて。

医療療養病床(20対1・25対1)と介護療養病床との比較4ページ

 これによると、20対1の医療療養病床では、医療区分2・3の該当患者が9割を占めている。25対1では約6割、そして介護療養病床では2割弱となっている。一方で、5ページ「要介護度」のグラフ。

医療療養病床(20対1・25対1)と介護療養病床との比較5ページ

 これを見ると、介護療養病床に入院している患者は8割以上が要介護4、5である。介護療養型には介護ニーズの高い患者の割合が多く、医療療養(特に20対1)では医療ニーズが強いという現状が表れている。
 医療療養病床20対1のうち、患者のうち1割が医療区分1に該当とあるので、この人たちは在宅に帰せるだろうという意見があるかもしれない。だが医療区分とは、いったん1、2、3のいずれかに該当したら、そのままずっと継続するわけではない。例えば、24時間点滴などは医療区分3で1週間、尿路感染症なら医療区分2で2週間などと期間が決まっていることが多い。 よって、医療区分2、3の患者が9割入っているとしたら、これは医療区分2、3の患者をほぼ100%と言ってよいくらいの割合で診ている病棟と考えて差し支えないだろう。

 11ページ「退院/退所後の行き先」について。

医療療養病床(20対1・25対1)と介護療養病床との比較11ページ

 これを見ると、医療療養病床20対1では、23%の患者が自宅・家族宅等へ帰っている。医療療養病床25対1でも36%の患者が自宅に帰っている。20対1では41%を占める死亡退院を除いて在宅復帰率を計算すると、50%近くが在宅復帰となっている。25対1でも、36%が自宅・家族宅等退院で、26.6%の死亡退院を除いて在宅復帰率を計算すると、5、6割近くが在宅復帰をしているという結果になる。ぜひ、療養病床の在宅復帰機能という点に着目していただきたい。

*資料2-4「介護療養型老人保健施設について」の16ページ「看取り・ターミナルケアの実施状況」について。

介護療養型老人保健施設16ページ

 これは医療療養病床における死亡退院は全て看取りということで集計されているのだろうが、必ずしもすべての死亡退院が看取りであるとは限らない。老人福祉施設や老人介護施設のようにターミナルケア加算を算定し、静かに看取っていくというイメージを療養病床も持たれているのではないだろうか。療養病床の患者には、急性期病床から転院してきて、医療機関側も一生懸命治療に取り組んだがやむをえず亡くなってしまったというケースも、かなりの割合を占めている。これでは、看取りをやっているとは言えない。看取りの議論を進めていく上で、この点を理解していただきたい。

*一口に医療療養病床と言っても、その機能はかなり幅が広い。例えば、医療療養病床のみ単独で運営している医療機関とそうでない医療機関とでは、提供する医療の機能が異なってくるだろう。また、医療療養病床では、医療と介護を一体的に提供しながらリハビリをして、かつ在宅支援をするということも可能である。在宅医療を支えるための一時的な入院にもある程度まで対応できるということは、先ほど資料2-1で見た在宅復帰率の高さからも明らかである。
 今後、高度急性期、急性期から患者を転院させていくにあたり、高い在宅復帰機能を持つ療養病床がさらに必要になってくる可能性は非常に高い。療養病床の病床数については現時点での必要病床数ではなく、高度急性期や急性期の将来像についても考慮しながらの議論が必要である。

*資料2-4の13ページ「退所/退所後の行き先」について。

介護療養型老人保健施設13ページ

 これによると、介護療養型老人保健施設では死亡者の割合が18.3%である一方、介護療養型医療施設、介護老人福祉施設では、倍以上の死亡退院を出している。つまり、転換型老健の場合、状態の比較的重い患者は、再び急性期の病院へ送り返しているということもあり得るのではないか。そのあたりも少し詳しく追跡する必要があるだろう。
 介護療養病床から介護療養型老健に転換したケースにおいては、2~3年すると、ほぼ既存の老健と同じような医療区分割合になっているという調査結果が出ていたと記憶している。事務局に資料提出をお願いしたい。そして、この結果がどういった意味を持つか考えながら議論を進めていくべきだろう。必ずしも転換型にすればいいということではないと考えている。

*提出させていただいた資料5について説明したい。
 まず、資料3「高知県の医療・介護の現状と今後の対応」の説明の際にもあったように、療養病床を中心とした一部の病院が、福祉施設の代替施設となっているという苦しい現実があることは、こちらも了解している。だが同時に、行き場所のない入院患者を決して作らないということも重要である。療養病床のこうした使い方は確かに不本意であるが、患者を路頭に迷わせないという熱意の裏返しとも言えるのではないか。

 2018年には25対1の医療療養病床と介護療養病床が廃止を控えているわけだが、このような状況の中で、これらの病床を本当にゼロにしていいのか。すでにマスコミに公表していることではあるが、私の所属している日本慢性期医療協会の会長は、病床の削減と、患者の行き場所との兼ね合いについて検討し、SNW(Skilled Nursing Ward)という施設形態を提案した。これは、院内の病床を病棟単位で、SNWという施設に転換する仕組みである。

池端構成員提出資料_ページ_02

池端構成員提出資料_ページ_03

 病院内に限っての開設を条件としたのは、もともと病床であった6.4㎡という狭い居住空間が、終の棲家としてはたして適切かという疑問があるためである。そのため現状では、25対1の療養病床や介護療養病床の転換先ということを念頭において、病院内の開設に限定している。

 また、3ページ「病院・介護施設の居室面積基準と一人あたりの最低家賃」では、基準額の試算をしてみた。SNWは介護療養型医療施設よりもさらに施設に近い形として考えているので、比較的低い単価に抑えられるのではないかと考える。

池端構成員提出資料_ページ_04

池端構成員提出資料_ページ_05

 配置基準についても、看護が40対1、介護が30対1と、現在の介護療養型よりも低めに設定している。医師については記載をしていないが、これはあくまで「施設」なので医師の配置はいらないのではないかということと、後はもともと病院内にあるので、何か問題があればすぐ医師が回診できるためである。

池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長) いずれにしても、20対1の療養病床や介護療養病床をすぐに廃止するのは無理があるので、院内施設という形で患者を診ていこうというのがコンセプトである。そうすれば、看護師も医師も余剰が出る。そして、この人材を訪問看護や在宅医療に向けることができれば、在宅復帰への支援にもつながる。この流れが進めば、最終的にはSNWの必要性も小さくなっていくかもしれない。唐突な提案に聞こえるかもしれないが、3局合同開催の本会においてこそ、ぜひお話しさせていただきたいと考え、資料を提出させていただいた。

*地方と都会における医療提供の差については、確かにある程度やむを得ないところがあると言える。都会でできることと地方でもできることが同じとは限らない。
 経管栄養をして呼吸器をつけている患者でも、在宅療養は可能である。しかし、地域によってできるかできないか違いがある。これは単純に、医療ニーズの高低によって決まるわけではなく、それ以外の社会的要因がかなり大きい。高齢で独居であったり、家族が負担を嫌がっていたり、金銭的な問題が大きかったりといった、様々な要素がある。しかも、そうした医療的にも社会的にも困難な患者が、限界集落のようなところに独りで暮らしていたりする。

 私が言うべき話ではないかもしれないが、在宅療養というのは、患者本人とその家族、つまり国民全体がどれだけ考え、覚悟を決めているかということと密接に関係しているのではないか。国民的な議論、理解があってこそ、患者を在宅へ帰すという構図が人々に受け入れられる。それが整わないうちに、制度だからという理由でだけで、患者を在宅へ返すよう医療者に押しつけるのは、非常に酷である。急性期の医師も、なぜ我々が患者さんに怒られながら退院させなければいけないのかと、本当に苦しんでいる。

 本検討会は、療養病床の在り方という範囲の議論だが、「時々入院、ほぼ在宅」から、2025年に向かって、最終形の「ほぼ在宅」に持っていけるようなシステムをつくるためにも、今のうちから国民的な議論をしていくことが必要かと思われる。

○第2回療養病床の在り方等に関する検討会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000096887.html

 



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