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平成27年度「第8回入院医療等の調査・評価分科会」出席のご報告

Posted By araihiro On 2015年8月27日 @ 4:57 PM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 平成27年8月26日、「平成27年度第8回診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」が開催され、池端幸彦副会長が委員として出席いたしました。
 本日の議題は、中間とりまとめ(案)についてです。
 

◇池端幸彦副会長の発言

池端委員20150826*慢性期医療の入院において、在宅復帰機能強化加算の算定要件から1ヶ月未満の入院患者を除くというルールを廃止することは理解するが、それにより、一般病床から直接退院できる患者を、1~2日だけ療養病床に入院させてから退院させるというケースが出ないかという議論が前回から出ている。急性期でも同じことが起こる可能性があるのに、(あたかも療養病床だからという理由で言及されることに関しては)大変不本意だと言わざるを得ない。どうしても心配なら、自院内の転棟は認めないというルールにすれば問題ないだろう。

*これまでこの分科会では、あくまでデータに基づいた評価によって議論を進めてきたと理解している。そして委員の見解が大方まとまれば、結論やまとめ、課題として提示してきたわけだが、褥瘡に関してはそうは言い難い。(資料1)11ページに「「褥瘡」の患者は、入院期間が長期に及ぶ患者により多くみられた。このことについては、個々の患者を経時的に追跡したものではないため、必ずしも入院期間中に新たに褥瘡が生じていることを示すものではないとする意見と、その様な可能性も示唆されるとの意見が両方みられた。」とまでは了解している。しかしその後半にある「いずれにしても、入院期間中に新たに褥瘡が生じたことをもって、それまでの医療区分を変更する必要はないものと考えられる」とあるが、これはあくまで事務局の、院内で発生した褥瘡はけしからんという思いからきたものであり、(資料2)179~180ページを参照しても、エビデンスとなるデータはどこにも示されていない。療養病床において、院内の褥瘡発生が増えているという明確なデータはどこにも示されていないのに、このような書き方をされてしまったのは(療養病床当事者代表としては)大変遺憾である。褥瘡についてこのような書きぶりで中医協に上げるなら、その根拠となるデータをきちんと出してからにしていただきたい。院内でやむをえず褥瘡ができてしまうというケースは、療養病床だから絶対にあるべきではない等とは言えないはずである。であれば、急性期病院の院内で発生した褥瘡の治療は評価をしているのに、療養病床では評価しないという事実とどう整合性をとるのか。
褥瘡を発生させた場合でもすべて医療区分1となれば、医療区分2、3の患者を8割以上確保しなければならない療養病棟入院基本料1算定の医療機関では、褥瘡を発生した患者はこのまま当院で入院継続はできません、在宅に帰りなさいということになりかねない。だが、褥瘡を放置したまま、在宅に帰すわけにはいかない。ではそうした患者はどこにいくのかというと、もう一度急性期病院へ入ることになる。こうした流れを引き起こしかねないという弊害も考慮していただきたい。
癌の末期で抗がん剤を使ってない、麻薬も使ってないという方は、すべて医療区分1である。癌の末期の方が低栄養になって看取る寸前、だが在宅にも帰れないという状況で褥瘡が発生したら、どうしろというのか。私の病院で内々に調査してみると、褥瘡を持っている患者はそういった人が多い。元気で在宅にも帰れる人に褥瘡が発生するのはけしからん、きちんと対応すれば褥瘡は発生しないという等というイメージだけで判断されては困る。だから、データもなしにただペナルティー的な意味で、院内の褥瘡発生を医療区分1にするというのは納得できない。現在の書きぶりのままであれば、この一文は削除を求めたい。
どうしてもこのように内容を入れたいのであれば、「持込の褥瘡と院内発生の褥瘡については、同じ評価でいいのかという意見もあった」というような書き方をしてはどうか。または、現行で、持込の褥瘡を治したら、その後1ヶ月間は医療区分2という救済措置もあるので、院内発生の褥瘡については一定期間を限定する等の評価の仕方を変える方向も含めてお願いしたい。

*療養病棟入院基本料2について、医療区分2、3の患者の入院割合について要件を設けるという点については、こちらとしても理解している。だが今後、血糖の頻回チェック、うつ病、酸素吸入等において、医療区分2、3ではどう扱うかという問題が出てくるだろう。医療区分2、3でこうした項目を医療区分2・3から外した場合、どれくらいの患者が医療区分2、3のままで残るか、さらには、入院基本料2を算定する医療機関では、平均6割程度の患者が医療区分2、3になっている現状にどう影響してくるかということをデータとして出していただいた上で、どういった要件の設定が適切か、慎重に中医協で議論していただきたい。

*資料1 3ページ「このように、現行の一般病棟用のB項目から、「起き上がり」「座位保持」の2項目を除き、「診療・療養上の指示が通じる」「危険行動」の2項目を加え、仮の7項目とした場合には、認知症やせん妄の患者が、B項目で、これまでより高く評価されることになる。仮の7項目を用いて、7対1入院基本料の病棟で試算した場合、点数分布や3点以上となる者の割合は、現行と大きな差はなかった」とあるように、急性期の認知症、せん妄患者について、B項目によってこれまでより高く評価されることになる。急性期病院も認知症、せん妄の患者が来て対応が大変だということは理解しているが、慢性期医療の現場では更に認知症の患者のケアで大変な思いをしているという同様の状況がある。
だからと言って、医療区分に認知症をいれてほしいとまで言い切るつもりはない。だが、(資料1) 11ページに「なお、医療区分1のうち、より重症な患者の評価の在り方や ADL区分の項目などを含め、次の医療・介護の同時改定等に向けて、医療区分のあり方について抜本的な調査や検討を求める意見があった」とある。確かに、以前、平成30年同時改定に向けて調査検討が必要だという意見を述べたが、先ほど、ADL区分とB項目の評価項目が非常に似ており、B項目がADL区分と統一されることによっての継続的評価につながるという意見があった。よって現時点でも、ADL区分を用いて、急性期から慢性期まで同じ項目で評価をすることが技術的に可能ではないかと考える。
いずれにせよ、一定数の慢性期病院がDPCデータ提出加算を算定しているという状況もあるので、そういう流れの中で、少しでもそろえられる評価項目はそろえるよう進めていただきたい。そしてぜひ、平成28年度改定においても、先行してADL区分とB項目の統一を検討していただきたいということを意見として述べたい。

*慢性期病院の立場からお願いしたいことが三点ある。まず一点目だが、これまで、療養病床はデータがないということをずっと言われてきた。しかしそうは言いながらも、データ提出加算を算定している慢性期の医療機関もすでにある程度の評価に耐えうる一定数を満たしつつある。療養病棟入院基本料1に関して言えば、かなりの割合の医療機関がDPCデータを取り始めてきている。今後、病院や施設の横断的調査をする場合には、今後は療養病床のデータも含めていただきたい。
二点目は、療養病棟入院基本料1と2では、明らかに機能が分かれてきているという点である。今後、次の改定に向けた調査等を行う場合、基本的に療養病棟基本料1と2では、すべてのデータを分けて検討していただきたい。
最後の要望は、有床診療所についてである。これまでの議論の中には有床診療所も検討対象として入っているが、現在、当分科会において有床診療所に関連のある委員はいない。もし今後、有床診療所について議論するのであれば、ヒアリング等を行って、有床診療所からの意見を取り入れていくべきではないかと考える。

○平成27年第8回入院医療等の調査・評価分科会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000095446.html
 



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