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「第1回療養病床の在り方等に関する検討会」 出席のご報告

Posted By araihiro On 2015年7月11日 @ 5:09 PM In 審議会,役員メッセージ | No Comments

 平成27年7月10日、「第1回療養病床の在り方等に関する検討会」が開催され、池端幸彦副会長が委員として出席いたしました。今回の議題は、「療養病床の在り方等を検討する際の論点について」です。遠藤久夫座長(学習院大学経済学部教授)は、今回は初回なので、自由に発言するよう各構成員に求めました。
 

◇池端幸彦副会長の発言
池端幸彦副会長20150710*本検討会の意見は、年内に取りまとめを行うと理解している。療養病床については、中・長期両方の観点から検討が必要と考える。なかでも平成29年度末で廃止が決定している介護療養型医療施設については、早急に議論する必要がある。今回の介護報酬改定で療養機能強化型が新設されたことは、介護療養型のニーズがある程度認めてもらえた表れと考える。
 だが今後の療養病床の医療提供の在り方を考えたとき、本当に介護療養型という機能がどのような形でどの程度必要なのかという点については、検討の余地があるのではないか。また、仮に規定通り現在の介護療養型を廃止した後、そこにいた患者は医療保険と介護保険のどちらでケアするのかという問題や、医師の当直の有無をどうしていくかなど、介護療養型については保険局、老健局、医政局の3局が集うこの場でこそ検討を進めていくべきと考える。

*療養病棟入院基本料2についても2018年度末の経過措置終了を控え、どのように対応していくかは今後の課題である。療養病床20対1と25対1というのは、現在、かなり機能が分かれている。20対1には、医療区分2・3の患者、すなわち長期の入院を必要とする重い症状の患者が8割以上いなければならないため、必然、急性期からの患者も受けることになるが、一方の25対1は、ケアミックス病院の形態で運営するケースが多く、自院内で介護度の重い患者を診ている。
 まずは20対1と25対1とで、それぞれデータを出す必要があると考える。現状を把握しないと、3年後の方向性を決めるのは難しい。地域医療構想ガイドライン検討会では、医療区分1の7割が在宅医療でも対応が可能といった将来予測が出されている。ただアンケート調査に答えてもらっただけの内容をデータとするのではなく、せっかく医療療養でもDPCデータ提出加算が取れるようになっているのだから、そのデータを資料として出してほしい。同様に、療養病床から地域包括ケア病棟に転換した医療機関のDPCデータも示してほしい。これらのデータは、療養病床の中ではトップクラスの医療機能を担う病棟に位置すると思われ、療養病床の今後の在り方を示してくれると期待する。ぜひ、これらのDPCやNDBのデータ提出をお願いしたい。

*地域医療構想策定ガイドライン検討会で提出された資料では、療養病床の入院受療率には大きな地域差があり、最大値(高知県)と最低値(長野県)の間には5倍もの差があるとのことだった。だが、同検討会で提出され、今回も参考資料1において出された「都道府県別の療養病床数、介護保険施設等定員数」をみると、特養だと長野県18.6人、高知県16.8人、老健では長野県13.1人、高知県9.6人となっており、長野県の方が定員数が多くなっている。受療率の差というよりは、医療や施設の提供体制に地域差があるのだろう。
 さらに、資料をみると、療養病床、特養、老健、有料老人ホーム、サービス付高齢者住宅それぞれの全国平均定員数はかなり均一になってきている。これは、療養病床の中に、居住系サービス施設や介護施設への入居でも対応できる患者が入っている可能性があるということだろう。
今後10年、20年先、高齢者が減ってくることを考えると、今から居住系施設や介護施設を新設するのは非効率である。例えば病院の空いた病棟(病床)を施設に転換するとか、発想の転換が必要である。

*そろそろ、一般病床と療養病床という医療法上の区分けをあらためる時期ではないか。考えるべきは、必要とされる医療をどれだけきちんと提供しているかである。
 医療区分についても見直しが必要だと考える。療養病床では長期の慢性期医療はもちろん、急性期病床からの受け皿の役割や、在宅医療の支援といった幅広い医療提供を行っている。医療区分の開始時から、状況はどんどん変化しているので、病態ごとの区分の仕方だけではなく、制度そのものの根本的な変革をすべきであろう。

*介護療養型と医療療養入院基本料1(病棟)とでは、看取りおよび死亡退院の傾向が大きく異なっているという点を指摘したい。介護療養型では、看取りを行っているという意識も強いかも知れないが、医療療養型では、急性期病床から転院してきた患者や、医療区分2、3の重い病態の患者を、何とかして治そうとしながらも死亡してしまうというケースが一定数存在する。これを「看取り」としてしまうのは、現場感覚とにズレがある。医療・介護を提供し治そうとしながらも、結果的に病棟で死をむかえてしまう。療養病床にはそうした死亡退院(広義の看取り)があるということも理解していただきたい。
 日本人の心理の内には、やはり最期は医師や看護師など、誰か専門職に看取ってほしいという思いがあるのではないか。「ときどき入院、ほぼ在宅」というフレーズは、まさにこうした心理に合致した考え方だろう。

*医療区分1の患者に在宅への復帰を提案すると、10人中2、3人はしぶしぶといった感じなのだが、いざ帰ってみると、やはり家に帰ってよかったと喜んでいるケースがかなり多い。我々医療提供者が在宅復帰を諦めていては、利用者も前向きになれない。在宅復帰を促す、一定程度のインセンティブの整備は必要だと思う。
 しかしながら、そうは言っても、療養病床にいる患者の7割が在宅に帰れるなどと思っている訳ではない。在宅医療からの受け皿としての療養病床というセーフティネットを保ちつつ、在宅医療を進める形をつくっていかねばならないと考える。

○第1回療養病床の在り方等を考える検討会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000091003.html
 



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