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第121回社会保障審議会・介護給付費分科会出席のご報告

Posted By araihiro On 2015年4月24日 @ 6:27 PM In 会長メッセージ,審議会 | No Comments

 平成27年4月23日、「第121回社会保障審議会・介護給費分科会」が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。今回の主な議題は「平成27年度介護報酬改定を踏まえた今後の課題について」です。事務局から、下記の三項目が今後の検討案として提示されました。

(1)次期介護報酬改定が診療報酬改定との同時改定であることも見据え、次期改定に向けて、平成27年度介護報酬改定に関する審議報告(平成27年1月9日)(以下「審議報告」という。)に記載された事項も含めた課題への対応については、平成27年度介護報酬改定検証・研究委員会における効果検証・調査研究等を活用し、その結果も踏まえ、介護給付費分科会において検討する。

(2)(1)に加え、特に以下の項目については、審議報告等の指摘も踏まえ、平成27年度以降に随時必要な検討等を行う。
 
 ①地域区分の在り方
 ②処遇改善加算の取得状況等
 ③介護事業経営実態調査の在り方

(3)平成29年度に予定される消費税10%引き上げに向けた対応については、消費税8%引き上げ時の考え方及びその後の事業所等の実態等を踏まえ、必要な対応を検討し、平成28年12月までに方針を策定。

 あわせて検討スケジュールが提示され、今後の進め方について委員からの意見、質疑応答がありました。
 
 武久会長は、中山間・過疎地域への介護の対応や介護職員の処遇改善、地域医療介護総合確保基金の活用、医療・介護施設の利用者に関する横断調査の必要性などについて発言されました。
 
 
◇武久会長の発言
*介護報酬改定の地域区分は、国家公務員の地方手当と同様、各都市それぞれの生活水準や消費者物価等は勘案されているが、サービス利用者がどれだけいるかについては考慮されていない。都市部であれば介護職員1人で1日10人近く訪問することも可能だが、地方ではそもそもの人口が少ない上に交通の便も悪く、1日に3人程度の訪問もやっとというのが現状である。当然、介護職員1人当たりの収入は、都市部と地方とで大きく差が出てくる。人口の少ない地域で介護職員を確保するためには、利用者が少ない分をカバーするために余分の給与を支払わねばならず、事業の継続は困難となる。職員も、条件の良い都市部へ流れていく。
利用者の実態に合わせた形での地域区分策定が必要な時期に来ているのではないか。このままだと、過疎地から介護サービスが消えかねない。決して、人が少ないからサービスの提供も手薄だという状況があってはならない。どんなに利用者が少ない地域でもサービス提供を行う体制を整えてこそ、地方創生といえるだろう。
 都市部、地方都市、過疎地それぞれにおける介護職員1人当たりの収入を調査し、どれくらいの地域差が見られるのかデータを出して細かく検討していくべきである。これらの調査の結果をみれば、取るべき対応はおのずと明らかになっていくだろう。

*介護職員の処遇改善加算と地域医療介護総合確保基金についてである。本来なら、介護保険制度とは、介護サービスを提供し介護報酬を得るという形で運用されるものであるが、この二つは、介護保険制度でカバーしきれなくなった取りこぼしの部分を補填するためのものである。このように、本筋以外の手段で対処しようというのは、非常に問題である。
平成26年度診療報酬改定における「医療提供体制の改革のための新たな財政支援制度」の基金の際は、多くの金額が公的医療機関に配分されてしまった。今回の介護報酬改定の地域医療介護総合確保基金は民間に重きを置く方向になっているようだが、結局は要領よく申請書を書いた事業所が給付を勝ち取っているのが実態だ。現状のサービス提供を考慮せず、書類だけで交付が決められてしまうとは本末転倒である。
介護職員の処遇改善についてだが、本来なら各事業所が介護報酬で得た中から給与を出すというのがあるべき姿である。それを、出せない施設があるから国でカバーしようというのは、考え直すべきではないか。自由競争社会では、過酷な労働条件のもとで働かせる上、給与も出し惜しむような事業所に、職員は集まらないのが自然の流れである。もう介護保険で面倒を見るのはやめて、それぞれの自主努力によって改善していく時期にさしかかっている。
次回改定までの3年間で介護保険本来の趣旨をもう一度見直し、これら二つの問題点について調査、検討を行うべきである。

*本改定においては、生活行為向上リハビリテーションの新設など、作業療法士を重用していただいたことに大変感謝している。日常生活の中では、20分もかけずにできる訓練はいくらでもある。作業療法士は他の療法士よりそうした訓練に強く、利用者が生活を送る上での助けとなるだろう。
加えて、通所介護と通所リハビリの違いをはっきり打ち出した点も、目指すところが分かってやりやすくなったという面から、事業者として感謝している。

*医療と介護は密接につながっている。介護施設だから医療は不得手というのは許されない。今後、急性期病院数の絞込みが進むにつれ、重症者も介護施設にどんどん入ってくるし、在宅にも帰るようになる。そうなると、医療保険でみるのか、介護保険でみるのかという議論が必ず起こってくる。それを避けるためにも、医療・介護の連携システムを検討する委員会を是非立ち上げていただき、次期同時改定までには医療と介護のすき間が埋められている形をつくりたい。

*医政局が地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会で提出した資料の中に、帰宅先があればすぐにでも帰れるという患者が、急性期の医療機関において7万人いるとのデータがあった。急性期でこれだけの数がいるとなると、病床機能の四区分の意義とは何かということになってしまう。
 平成22年に、「医療施設・介護施設の利用者に関する横断調査」を実施し、一般病棟、医療療養、介護療養、介護保険施設、在宅等にそれぞれどういった病態の患者がいるか検証した。それから5年近くたっている。そろそろ、医療・介護をともに対象とし、適切な病床や施設に、適切な患者が入り、治療を受けているのか調査を行い、変革していくべきであろう。

○第121回社会保障審議会・介護給付費分科会資料については、厚生労働省のホームページをご参照ください。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000083747.html 



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