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慢性期病床についてもDPCデータによる分析を―第9回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会 出席のご報告

Posted By araihiro On 2015年3月19日 @ 6:17 PM In 会長メッセージ,審議会 | No Comments

 平成27年3月18日、「第9回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」が開催され、武久洋三会長が構成員として出席いたしました。武久洋三会長はこれまで、療養病床の入院受療率だけで「慢性期機能」の医療需要を推計するのでは不十分である、と強く主張してきました。その結果、今回示された「地域医療構想策定ガイドライン」の最終案では、「慢性期」の需要推計について、地域の実情に配慮する2つの特例が追加提案されています。

 2025年の「慢性期機能」の医療需要を考えるにあたっては、考慮すべき視点として次の3つが挙げられていました。

○療養病床は現在、診療報酬が包括算定であり、医療行為を出来高換算した医療資源投入量に基づく分析を行うことができない。
○地域の病床や在宅医療の充実、介護施設等の整備状況等にはバラツキがある。
○療養病床の入院受療率には地域差がある。
 
 そのため、「慢性期機能」の医療需要の推計については、概ね、下記の考え方を採用することとされていました。
 
○現在では療養病床に入院している状態の患者数のうち、医療機能の分化・連携により、一定数は、2025年には、「在宅医療等」で対応するものとする。
○医療資源投入量とは別に、地域が、現在、療養病床の対象とされている患者をどの程度「慢性期機能」の病床で対応するか、「在宅医療等」で対応するか、について目標を定める。その際、療養病床の入院受療率に地域差があることを踏まえ、この地域差を一定の目標まで縮小していく。
 
 都道府県は、構想区域ごとに、下の図にある「パターンA」から「パターンB」の範囲内を目標として療養病床の入院受療率の地域差を解消することとされています。

入院受療率の地域差の解消目標

 上記の考え方について今回新たに追加された2つの特例は、療養病床の入院受療率の目標値を一定の要件のもとに緩和するという提案です。「慢性期機能」の医療需要は、「在宅医療等」を受ける患者と一体として捉えることとなっているため、この特例により、退院患者の受け皿となる介護施設や高齢者住宅等の整備状況をはじめとした地域の実情に配慮されることになりました(下記参照)。

慢性期病床の推計の特例

 武久洋三会長は、当初の議論と比べるとかなり慢性期病床の実態が把握されるようになった、と述べ、追加提案の特例を含めた「慢性期機能」の需要推計の考え方を評価しました。その上で、「地域医療構想策定ガイドライン」がより充実したものとなるよう期待を込めて、以下の意見を述べています。

◇武久洋三会長の発言

*慢性期病床であっても軽症の患者が入院しており、在宅医療であっても重症の利用者がいる。そのため現段階では、「慢性期機能」および「在宅医療等」の医療需要を入院からの日数によって同一線上で推計するという考え方は一応是認したい。しかし、療養病棟も「DPCデータ提出加算」の対象とされ、前回の検討会で、「療養病床全体における1日ごとの医療行為のデータが提出される体制が整った場合は、医療資源投入量に基づく分析について検討する」こととされた以上、是非とも近い将来、慢性期病床についてDPCデータによる分析を実現していただきたい。当協会の68の役員関連病院ではすでに、その半数が「DPCデータ提出加算」の届出を済ませている。いずれにしても、本検討会の議論は平成25年時点のデータに基づいているので、平成26年度診療報酬改定や平成27年度介護報酬改定の影響を含めた再検討はすぐに必要である。

*療養病床の入院受療率が最大の高知県と最小の長野県とで約5倍もの大きな開きがあったという点については、前々回の検討会で、地域ごとの一般病床や介護施設等の運営状況をも勘案しなければそのまま比較することはできない、と指摘していた。その結果、「都道府県別の病床数・介護保険施設定員数」を合わせ見ることによって、今回の「療養病床の入院受療率の目標に関する特例」に結びついたのだと思う。

*ガイドラインにおける「回復期機能」の概念が今一つはっきりしていない。以前の呼称で言う「亜急性期」と重なる概念なのか。もし「亜急性期」と重なるのであれば、平成23年の社会保障・税一体改革の関連で示された「将来像に向けての医療・介護機能再編の方向性イメージ」では、かなりのボリュームを占めていたはずである。にもかかわらず「回復期機能」として報告された病床数が低くとどまっているのは、「回復期機能」の概念が「回復期リハ」だけに限定されるのか、あるいは「地域急性期」をも含むのかが曖昧なためであろう。これは、「地域包括ケア病棟」をどの医療機能として報告すべきか、ということにも連なる問題である。

*各医療機能の必要量と各医療機関から報告される病床数との調整を行う「地域医療構想調整会議」について、病院団体からの参加を求める意見がある。しかし、病床機能の報告ということからすれば、病院病床を実際に運営している者こそふさわしいのではないか。病院団体では、参加団体がすべて「急性期機能」の代表者に偏ってしまうということもあり得る。「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」のそれぞれの病院関係者が関わるのが最も公正である。

*安倍政権が外国人労働者の受け入れを拡大していく中で、なぜ、ガイドラインの「医療従事者の確保・養成」の項目に「EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者の受け入れ」についての言及がまったくないのか。昨年の出生数は100万人前後で、成人人口は約120万人である。単純に1年で1万人ずつ減っている計算となり、10年後の出生数は90万人になってしまう。出生する者の過半数が看護師を志望するよう誘導するわけにもいかないので、2025年の医療需要に対応する医療関係者を養成していく上で、外国人看護師・介護福祉士の受け入れは避けて通ることはできない。

 検討会のとりまとめにあたり、厚生労働省の二川一男・医政局長は、「国としては地域医療構想の実現に向けてPDCAサイクルをいかにまわしていくかという課題があり、都道府県の策定状況を踏まえながら病床機能報告制度を定量的なものとして、ガイドラインそのものを精査していく必要がある」と述べ、2025年の医療提供体制の構築に向けたガイドラインの今後の見直しについて、構成員にさらなる協力を求めました。
 
 構成員の了承を得たガイドラインの最終案は、文言等の修正後、関係省令と合わせて3月中に都道府県に通知される予定です。

○第9回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000078126.html



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