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第7回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会 出席のご報告

Posted By araihiro On 2015年1月30日 @ 4:19 PM In 会長メッセージ,審議会 | No Comments

 平成27年1月29日、「第7回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」が開催され、武久洋三会長が構成員として出席いたしました。今回の開催では、2025年の医療需要の推計方法の「基本的な考え方」について再確認され、地域医療構想策定前の体制整備および策定後の取組に関する論点が示されました。
 
 会議の冒頭、厚生労働省の佐々木昌弘・医師確保等地域医療対策室長より説明された「医療需要の推計方法の基本的な考え方」は、医療機能ごとに以下のように要約できます。

○「高度急性期」「急性期」回復期」の医療需要:
 平成25年度のDPCデータおよびNDBのレセプトデータに基づき、構想区域ごとの性年齢階級別の入院受療率を医療機能別に算定し、これに当該構想区域の平成37(2025)年の性年齢階級別人口を乗ずることによって将来の医療需要を算出する。
 
○「慢性期」の医療需要:
 療養病床の入院受療率に地域差が生じているため、この差を縮小させる目標を設定し、「高度急性期」「急性期」「回復期」の算定方法に基づきながら、目標設定を加味することによって「慢性期」の医療需要を推計する。
 
 武久洋三会長は、「慢性期」の医療需要を療養病床の入院受療率をベースとして推計する考え方について次のように述べ、問題点を提起しました。
 

◇武久洋三会長の発言

武久洋三会長0129 ① 厚生労働省から示されたデータによると、療養病床の入院受療率には都道府県によって地域差があり、最大と最小とでは約5倍もの開きがあった。しかし、同じ国内の都道府県間の比較において、療養病床の対象となる疾患の数に5倍もの差があるとはとても考えられない。このように大きな差があること自体に疑問を持つべきである。
 人口に対する療養病床の病床数は、都道府県によって多いところもあれば少ないところもある。まずは、療養病床の入院受療率が低い都道府県の実態の把握に努めるべきであろう。東京都であれば、都内ではなく近郊の療養病床に入院しているのかもしれない。また、療養病床と一般病床のどちらも少ない都道府県であれば、在宅医療の割合が高いのかもしれない。いずれにしても、療養病床の対象となる患者がすっかり消えてしまうということはあり得ず、必ずどこかで治療を受けているはずである。
 ではどこで治療を受けているのか。私は一般病床においてであろうと推測している。そうであるならば、療養病床と介護施設の相関関係だけではなく、療養病床と一般病床の相関関係についても分析が不可欠であろう。療養病床の入院受療率をみて、地域差があるから解消していくという思考は理解できなくはないが、他の因子を十分に探る必要がある。都道府県によって医療ニーズの発生に大きな違いがあるとは思えないので、医療の供給側に要因があるという視点を持って検討を進めていただきたい。
 
 ② 入院当初の1日あたりの医療資源投入量が高い時期(3~4日程度)が「高度急性期」ないし「急性期」で、日を追うごとに医療資源投入量が低下していき、おおよそ21日目以降の安定した時期から「慢性期」になるという説明があった。しかし実際には、入院21日目以降の医療資源投入量でよい程度に状態が安定しているのであれば、その患者は在宅に復帰できるはずであり、「慢性期」に入院する必要はない。「慢性期」には、急性期の手術または処置を終えた後も引き続き治療が必要な患者が入院することになる。順調に回復しているのであれば、患者は「急性期」から直接在宅に復帰していく。医療資源投入量が低くなった時期が「慢性期」に該当するという認識は、まるで現実に合致していない。このことを強く念押ししたい。
 
 ③ 「慢性期」の医療需要について憂慮する向きがあるが、私はむしろ、急性期医療がどのように絞り込まれていくのかを案じている。「地域医療構想」のメインテーマは、急性期医療の絞り込みにこそある。当院および関連病院の概算ではあるが、20対1における「重症度、医療・看護必要度」の基準を満たす患者の比率は約30%であった。7対1施設基準ではその比率が15%以上とされていることからすれば、慢性期病院の方がより重症の患者を診ているという場合も多くあろう。重症患者に対応している慢性期病院は、今後も全く揺らぐことはない。たしかに慢性期病院には、社会的要請などもあって、介護施設や在宅でも対応が可能な患者が一定数入院している。しかし今後の圧倒的多数は、急性期病院の絞り込みによって絶え間なく移ってくる「治癒していない患者」であって、慢性期病院で診るべき患者はますます重症化していく。「慢性期」の医療需要が低下するなどということは、微塵も考えていない。
 
 ④ 尾形裕也構成員(東京大学政策ビジョン研究センター特任教授)より、療養病床と在宅の相関関係の分析にあたっては、療養病床を医療療養病床と介護療養病床とに分けて検討するべき、とのご意見があった。私もそのとおりだと考えるので、当協会が3年前に実施した調査の結果を関連として述べさせていただきたい。私は決して医療区分が適切な診療報酬体系であるとは思わないが、指標として医療必要度の低い区分1が入院患者に占める割合をみると、20対1では約10%、25対1では約40%、介護療養病床では約70%という結果であった。必要があれば、参考資料としていつでも提出する準備はできている。
 

 他の構成員からは、「慢性期の医療需要には、地域の事情や住民の価値観、人生観が影響するので、数値によって一律に推計することが国民の幸せにつながるのかは疑問が残る」(相澤孝夫構成員・日本病院会副会長)、「療養病床の入院受療率を補正する設定案(A案およびB案)は二次医療圏の入院受療率に基づいているはずだが、示されたデータは都道府県別の入院受療率だけではないか。二次医療圏の入院受療率が示されなければ検討は進められない」(西澤寛俊構成員・全日本病院協会会長)、「病床機能報告制度における機能別病床数の報告状況について速報値が示されているが、特定機能病院がどの機能として報告しているのかという傾向についても公表するべきではないか」(中川俊男構成員・日本医師会副会長)などの意見や指摘がありました。
 
 次回の地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会は、2月中旬に開催される予定です。
 

 ○ 第7回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
  ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000072577.html
 



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