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第6回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会 出席のご報告

Posted By araihiro On 2014年12月26日 @ 4:51 PM In 会長メッセージ,協会の活動等,審議会 | No Comments

 平成26年12月25日、「第6回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」が開催され、武久洋三会長が構成員として出席いたしました。これまで数回にわたって検討されている「2025年の医療需要の推計方法」について、今回は、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」を分類する境界点や在宅医療の今後の充実を見込んだ「慢性期」の医療需要の考え方が提案されています。
 
 医療需要の推計とは、医療を必要とする人はどのくらいいるかを算定することです。地域医療構想策定ガイドラインは、まず、各医療機能の医療需要(患者数)を算出し、それを基に、各医療機能の必要量(病床数)を推計するという手順で策定されることとなっています。
 
 「高度急性期」「急性期」の医療需要については、DPCデータやNDBのレセプトデータを踏まえて推計する方針となっており、参考資料として、1日当たりの医療資源投入量の推移が示されました。
 
 一方、診療報酬が包括となっている療養病床では、医療行為を出来高換算した医療資源投入量の分析を行うことができないことから、「慢性期」の医療需要については、「在宅医療等」を受ける患者と一体として捉える、という提案となっています。すなわち、2025年までの間に「在宅医療等」の充実が進めば、療養病床の入院受療率が低下し、現在、療養病床に入院している患者は「在宅医療等」で対応することになるであろう、という考え方です。
 
 武久洋三会長は、「回復期と慢性期・在宅医療等の境界点」および「地域の実情に応じた慢性期と在宅医療等の需要推計の考え方」について、以下の意見を述べています。
 

◇武久洋三会長の発言

武久洋三会長20141225*慢性期病床にも急性期的な患者がおり、急性期病床にも慢性期の患者がいる。当院の例で言えば、療養病床100床のうち31人は人工呼吸器患者である。なぜ人工呼吸器患者が療養病床に入院しているのかと怪訝に思われるかもしれないが、近隣の日赤や県立病院から重態の患者が絶え間なく転院してきているのが実状である。一見すると、ICU(集中治療室)とほとんど状況は変わらない。違う点があるとすれば、病気になってから長期間経過しているという点である。つまり、手術や感染症治療などの高度な治療の後は、急性期治療によって落ちた体力をすみやかに回復し、リハビリによって日常への復帰に努めるという体制が患者にとって適切ということであろう。とくに高齢者であれば、急性期病床から直接在宅に復帰するということは通常考えられないので、なおさらである。

*「回復期と慢性期・在宅医療等の境界点」について、「療養病床または在宅等においても実施できる医療やリハビリテーションの密度における医療資源投入量」を基本とする考え方は不可解である。療養病床はすべて「慢性期」だと画一的にとらえる立案は、あまりに短絡的であろう。特段、「療養病床」とは明記せずに、単に「病院病床」とすればよいのではないか。急性期治療後の重症な後遺症患者に対応している療養病床と在宅医療とが同程度の医療であるとの認識は、理解に苦しむ。

*「地域の実情に応じた慢性期と在宅医療等の需要」の推計案は、療養病床の入院受療率をベースとしているが、地域ごとの入院受療率を指標とするのであれば、統計の取り方には十分注意しなければならない。すなわち、人口に対する療養病床の病床数は地域によって大きく異なり、法定の病床数をはるかにオーバーしている地域も、逆に不足している地域もあるからである。また、一般病床の病床数との対比も影響し、療養病床の病床数が少ない地域では、本来療養病床に該当する患者が一般病床に入院しているということもある。さらに言えば、特定除外制度の原則廃止により、一般病床を取り巻く環境自体が大きく変化しているので、療養病床の入院受療率だけを取り出して推計の指標とするのはただちに得策とは言えない。

*療養病床では、診療報酬が包括算定のため、医療行為を出来高換算して分析することができないとの説明があった。しかし、療養病棟もデータ提出加算の提出対象となり、また、病床機能報告制度によって一般病床・療養病床を有する病院・診療所はレセプトデータを都道府県に報告しているので、活用できるデータはあるはずである。慢性期の医療需要を療養病床の入院受療率という一つの尺度だけで決定してしまうことのないよう、慎重に検討していただきたい。

*療養病床について検討するにあたっては、20対1と25対1とを分けて考える必要がある。なぜなら、20対1には医療区分3の患者と医療区分2の患者の合計が8割以上であることという施設基準があるため、25対1とは患者像が大きく異なるからである。したがって、入院受療率にしても、20対1と25対1とで分けたデータで考察をしていただきたい。25対1で懸命に取り組んでいる医療機関があるのは重々承知しているが、20対1には医療区分2、3が8割以上という施設基準があること、25対1は実際には7対1や10対1とのケアミックス病院に多いことから、両者の違いに着目すべきであることをあえて申し上げる。

*急性期医療を代表する中川俊男構成員(日本医師会副会長)から、「療養病床を削減し、在宅医療の推進に努めることがあたかも改革であるかのような政策はいかがなものか」という趣旨の発言があったが、まさに我が意を得たりという思いである。たしかに、「在宅医療等へ移行する患者数については、在宅医療の充実等により、現在では療養病床に入院している状態の患者は、2025年には在宅医療等での対応となる」という記述は、在宅医療が充実すれば療養病床はそれほど必要ではない、とも受け取れる言い回しである。先ほど、当院の入院患者の約30%が人工呼吸器患者であるとお話ししたが、人工呼吸器患者であれば在宅でも診ているという冷ややかな反応があった。しかし果たして、在宅に人工呼吸器患者がどれくらいいるのか。1%いるだろうか。あまり安易に考えないでいただきたい。療養病床では、一般病床から転院してくる重態の患者に対応するべく医師や看護師を加配しているという現実がある。当院の場合であれば、医師16対1、看護師10対1の体制で取り組んでいる。入院患者の全員がいずれ必ず在宅に復帰できるという考えは、現実に目を背けた過度の期待ではないか。急性期病床での治療後、どうしても在宅に復帰することができない重態の患者を守る最後の砦は絶対に必要である。このような患者への対応が考慮されているのか、甚だ疑問である。

 他の構成員からの発言としては、「臨床の立場からすると、病床機能の分類は物的な医療資源だけではなく、タイムスタディの実施により、医療スタッフがどれくらいかかわっているかを加味した検討を要する」(西澤寛俊構成員・全日本病院会会長)、「2025年時点の医療需要の推計なので、人口構造の劇変を鑑みた上で、疾患構成ごとの推計を行うべき」(相澤孝夫構成員・日本病院会副会長)、「大都市では後期高齢者の人口が大幅に増加するので、療養病床の需要は必ず増える。入院受療率の議論と病床数の議論とは明確に分けるべき」(松田晋哉構成員・産業医科大学医学部教授)などの意見がありました。

○第6回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000069925.html
 



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