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「介護療養病床の今後の方向性」── 9月11日の記者会見

Posted By araihiro On 2014年9月12日 @ 11:44 PM In 会長メッセージ,協会の活動等,役員メッセージ | No Comments

 日本慢性期医療協会は9月11日に定例記者会見を開き、「介護療養病床の今後の方向性」について武久洋三会長と池端幸彦副会長が見解を述べました。武久会長は医師や看護師の配置予想を示し、「介護療養病床は『25:1』『30:1』の二本立てになる可能性がある」と指摘。池端副会長は介護療養病床に関する調査結果を示し、「看取り数が多いことがすなわち『機能』ではない。看取りのプロセスをきちんと評価すべき」と強調しました。

 同日の会見には、武久会長と池端副会長が出席。冒頭で武久会長は、今改定で療養病床に導入された「在宅復帰機能強化加算」の申請状況などを示し、平成30年度の診療報酬・介護報酬同時改定で「一般病床と療養病床に分けている病床を『治療病床』に統一するという方向性も考えられる」と予想。「日慢協では、会員病院が『慢性期治療病棟』としての機能を十分に果たせるように支援していく」と述べました。

 続いて、池端副会長が「介護療養病床の機能に関する緊急調査」の結果を報告。介護療養病床で最も多かったのは「看取り機能」11.9%、次いで「経管栄養の管理」11.6%、「医療区分1の中で医療的管理が必要な疾患への対応」11.5%──などの順だったことを示し、「介護療養病床の『機能』は今後さらに必要になる」と指摘。次期介護報酬改定などに向け、介護療養病床が果たす機能について「具体例を示しながらアピールしていきたい」と述べました。

 武久会長と池端副会長の発言要旨は下記のとおりです。会見資料を日本慢性期医療協会のホームページに掲載しておりますのでご参照ください。
 

■ 在宅復帰機能強化型加算の申請状況
 
[武久会長]
 本日の記者会見でみなさんにお話しする項目を資料にお示しした。まず会見資料の1ページをご覧いただきたい。

 ※ 資料はこちら → http://jamcf.jp/chairman140911.html
 
 7月、日慢協と地域包括ケア病棟協会の会員病院にアンケート調査を実施した。今改定で「在宅復帰強化型療養病床」が新設されたことを受け、「強化型」に変わった病院がどのぐらいあるか、また来年3月までに算定する予定の病院がどのぐらいあるのかを調べた。

01_会員病床数調査集計結果

 調査によると、今改定で新設された「在宅復帰機能強化加算」を算定している病院は、464病院のうち156病院だった。改定後の7月に92病院が「強化型」を算定し、来年3月には156病院が算定する予定となっている。
 

■ 「25:1」から「20:1」への転換意向

 今年の3月時点では、459病院のうち療養病棟入院基本料の「20:1」が334施設、「25:1」は125施設だった。アンケート調査の結果を見ると、来年3月に「25:1」が125施設から116施設に減り、「20:1」は増える。

 2ページは、「20:1」と「25:1」の病床数。日慢協の会員病院は、「25:1」が療養病床全体の3分の1しかない。ところが日慢協以外は約6割ある。すなわち、日慢協の会員病院は「20:1」のほうが多い。

02_病床機能別病床数

 今回の改定を振り返ると、病院は治療の場であって、「療養」という概念を病院・病床からなくそうというベクトルが働いていると思っている。療養病床を治療病床にレベルアップさせたうえで、「一般病床」と「療養病床」に分けている病床を「治療病床」に統一するという方向性も考えられる。
 
 すなわち、「一般病床」と「療養病床」の垣根がなくなる可能性がある。このため日慢協は、平成30年の同時改定で「一般」「療養」の区別がなくなることを念頭に置いた取り組みを進めている。

 具体的には、DPCデータをすべての会員病院が提出することを目標に置いている。例えば、「一般」と「療養」のハード部分を見ると、療養病床は(1人当たりの居室面積が)6.4㎡以上の4人部屋などの基準だったが、現在は一般病床も同様の基準になっている。4.3㎡の経過措置はまだ残っているが、やがて廃止される。ハード部分が統一されると、医師と看護師の配置の違いはあるものの、「一般」と「療養」とを分けておく意味は薄くなる。

 今改定で、DPCのデータ提出加算が全病棟(短期滞在手術基本料1を除く)で算定できるようになった。来年4月から7対1と地域包括ケア病棟は必須となる。療養病床でもデータ提出加算を算定できる。そうなると、DPCデータの提出はもはや急性期病院に限定されたものではない。

 療養病床で、「医療区分」に基づく請求をしながらDPCデータを提出するということは整合性がとれない。もし、療養病床の「医療区分」が廃止されて、すべてDPCに移行するとしたら、当然のことながら病床を「一般」「療養」に分けておく必要はなくなると考えている。従って、こうした制度変更に対応できるように準備している。

 8月16日、DPCデータ提出加算の研修会を地域包括ケア病棟協会が開催した。10月18日に第2回が開催されるので、すべての会員病院がデータ提出加算を取ることを目指す。データ提出加算の点数自体は割に合わず事務負担は増えるが、全病院がデータ提出を義務づけられる方向性を見据え、日慢協ではこのような方針を決めている。

 厚労省としては、DPCデータを収集することによって各病院の治療実態をつかみたいとの思いがある。治療や検査の実態がデジタルなデータで瞬時に出てくるので、DPCデータを出してもらう。そうすれば、全国の病院の状況が一瞬にして把握できる。

 厚労省はDPCデータが非常に便利なツールであることを十分に知っている。このツールは急性期病院だけではなく、慢性期病院を含めた病院に提出させれば、日本中の病院のデータを把握できる。われわれは、そうした厚労省の方向性に協力していきたい。
 

■ 第2回慢性期リハビリテーション学会の案内

 来年3月14、15日の2日間にわたり「パシフィコ横浜」で開催する。
 現在、1,000近い演題を予定している。来場者も1,000人以上となり、かなり大きな学会になると期待している。
 

■ 医師や看護師の配置予想(療養病床の方向性)

 医師や看護師の配置予想を示す。将来、このような方向に医療体制が変わると予想している。すなわち、7対1を絞った後、恐らく平成30年度の診療報酬改定で7対1入院基本料に看護配置「5:1」を導入してくる。急性期は、「5:1」と「7:1」になるだろう。

03_将来の病棟別Dr・Ns・CWの配置予想

 「急性期」の後方を担う「地域包括期」の看護配置は、「10:1」と「13:1」になる。現在、「13:1」と「15:1」は一般病床に位置づけられている。もちろん、「一般病床」イコール「急性期」ではないが、「地域包括期」よりも看護師さんが少ない所が一般病床として残る可能性は、経過措置の間は別として、将来残る可能性は非常に少ないだろうと予想している。

 「慢性期」は、「15:1」「20:1」になるだろう。今回のように、急性期をどんどん絞り、特定除外の患者さんの退院が促進されると、重度の患者さんをポストアキュートの病床で受け入れる必要性が高まる。また、「慢性期」の病床がサブアキュートの患者さんに対応する必要性も強まる。

 そうすると、療養病床の「20:1」でも、看護配置が「15:1」くらいでなければ対応できないケースが増える。そうしたことを考えると、平成30年度の同時改定で、「慢性期」は「15:1」「20:1」になるだろう。

 7月9日、厚労省前医療課長の宇都宮さんが「25:1は施設に移るように」とおっしゃった。25:1が介護施設になるということは、ほぼ厚労省の基本方針ではないか。従って、介護療養病床は「25:1」と「30:1」の二本立てになる可能性がある。ターミナルや認知症の患者さんは介護療養病床でみる。

 しかし、どうしても在宅に帰れない人はいる。そうした方々を今後どうするのか。例えば、気管切開している重度の患者さん。こうした方々を受け入れるのは「重度長期慢性期病棟」であり、これは「20:1」に位置づけられると思っている。一方、療養病床の在宅復帰強化型は「15:1」であると予想しており、会員病院のみなさんをこのようなシフトにつくり変えていく。

 これに対し、落ち着いた慢性期の患者さん多く入れている療養病床は今後、かなりの内部改革が求められるだろう。従って日慢協では、会員病院が「慢性期治療病棟」としての機能を十分に果たせるように支援していく。
 

■ 地域包括ケア病棟の手術報酬を別立てに
 
 地域包括ケア病棟は短期滞在手術基本料については別立てだが、その他の手術や処置は包含されている。しかし、100床規模の中小病院では整形の手術などを月10件ぐらいこなしている。ということは、7対1の病棟を残さないといけない。手術を受けた入院患者さんは早期に退院するとしても、在宅復帰率や平均在院日数をクリアできない病院が多くなる。

 厚労省は、地域包括ケア病棟に「救急指定を取ること」と命じている。救急指定を取るということは、救急患者さんが搬送されてきたら緊急手術をしなければならない。7対1病棟で手術をするよりも地域包括ケア病棟で手術したほうが、基本点数が低いので患者さんにとってもメリットがある。

 従って、地域包括ケア病棟の手術点数については、ぜひ別立てにしていただきたい。次回改定に向け、「地域包括ケア病棟の手術報酬を別立てに」ということを提案していきたい。
 

■ 「慢性期医療総合診療医」認定講座の案内

 12月6、7日から来年2月14、15日までの3ヵ月間、「慢性期医療総合診療医 認定講座」を開催する。日慢協ではこれまで、「慢性期医療認定講座」と「在宅医療認定医講座」の2つを開催しており、約800人の認定医が誕生している。これら2つの講座を統合し、「総合診療医」の認定講座とする。

 これは各病院からの要望を踏まえた。例えば、急性期病院に勤務していた医師が慢性期病院に移っても慢性期医療の理解が十分ではないので、支援する必要がある。急性期医療の延長でとらえる傾向があるので、いろいろな問題が多いし、リハビリに対する理解度も乏しい。 そこで、急性期病院から赴任してきた医師を対象に、慢性期医療の「総合診療医」の認定講座を開くことにした。この講座には、日慢協の会員以外の病院からも参加できる。

 日慢協の各研修会は講師を厳選しており、各分野の実力ある先生方を講師としてお招きしている。今回の講座も非常に優秀な先生方に来ていただく予定になっている。
 

■ 地域包括ケア病棟のリハビリに対する考え方

 日慢協の会員病院のなかで、これから地域包括ケア病棟を取る病院はリハビリ力がある。要件は1日平均「2単位以上」だが、患者さんにとって必要ならば2単位ではなく4単位すべきという共通認識がある。

 さらに、地域包括ケア病棟で2単位をクリアした後は、「集団リハ」や「IADLリハ」、「ADLリハ」など、5分刻みで対応できるようリハを多く実施すべきと考えている。
 

■ 特定入院料の見直しについての要望

 地域包括ケア病棟の診療報酬は、特定入院料であり、200床以上の場合には地域包括ケア病棟だけでは成立しない。すなわち、すでに療養病床や一般病床を持っていて、そのうえで地域包括ケア病棟を取る仕組みになっている。

 ところが全国には、病院全体が回復期リハビリテーション病棟の病院も少なくない。今後は、特定入院料だけの病院も認めていただきたい。例えば、地域包括ケア病棟が50床、回復期リハビリ病棟50床という構成の病院も認めていただきたい。そうすれば、無理に一般病床10対1を残すということがなくなり、地域の急性期医療は地域包括ケア病棟に包含されていくだろう。

 慢性期医療の幅が広がり、いわゆる「老人収容所」のような療養病床はもう値打ちがないという方向性を突き付けられている。われわれは、「慢性期治療病棟」として、きちんとした慢性期医療を提供していく。「良質な慢性期医療がなければ日本の医療は成り立たない」という思いで、会員一同、邁進していく。今度とも、よろしくお願い申し上げる。
 

■ 介護療養病床の今後の方向性
 
[池端副会長]
 今年8月、日慢協の会員病院を対象に「介護療養病床の機能に関する緊急調査」を実施したので、その結果をご報告する。資料はホームページにアップしている。現在の状況や会員の要望などをお話ししたい。

 ※ 資料はこちら ↓ http://jamcf.jp/enquete/2014/201408kaigoryouyoubyosyo_enquete.pdf
 
 本調査の回答病院は267施設、うち介護療養病床単独の病院は15施設。各施設の疾患・病態等への対応や機能について、「看取り」「認知症対応」などを表にまとめている。

04_11項目の疾患・病態等へ対応および機能

 介護療養病床で最も多かったのは「看取り機能」11.9%、次いで「経管栄養の管理」11.6%、「医療区分1の中で医療的管理が必要な疾患への対応」11.5%──などの順となっている。

 資料2ページ以降では、「介護療養病床」「転換型老健」「従来型老健」「特養」などの種別ごとに、「最も対応できる」「対応できる」などの回答結果を色分けして示している。「介護療養病床」とその他を比較すると、対応できる機能がどのように違うのか一目瞭然である。

 介護療養病床がこうした多くの機能を担うために、「医師を24時間配置する必要があるか」を尋ねたところ、9割が「必要」と回答した。

 介護療養病床の転換予定については、「ない」19.8%、「未定」49.5%となっており、転換予定はまだ3割程度にとどまっている。転換予定先については、7割近くが医療療養に戻りたいとの意向であった。これまで転換しなかった理由については、会員の生の声を掲載しているのでご参照いただきたい。

 すでに介護療養病床を転換した病院について見てみると、今年1月から6月にかけて増えている。転換して良かった点、悪かった点についても会員の回答を載せている。

 こうした結果を踏まえ、介護療養病床の今後について当協会はどのように考えるか。これから議論すべき点は多いが、少なくとも介護療養病床の「機能」については残すべきであり、今後さらに必要になってくる機能であると考えている。厚労省もそうした方向性を社保審の介護給付費分科会で示しているので共通認識はあると感じている。

 介護療養病床がその機能を十分に果たすためには、医師が24時間対応できる体制が必要になる。100床に3人という医師の配置基準を守らないとできない。ここが大きなポイントになる。

 介護療養病床を有する病院には、「病院として残りたい」という希望がある。そのためには、枠を広げるだけではなく、どういう方々が入っているのかをきちんと峻別したうえで具体例を挙げながら要望していく必要があるだろう。

 具体的には、医療療養病床の「医療区分1」の中で重度の患者さん。喀痰吸引7回以下の患者さんや、がん末期で麻薬を使わずに管理が必要な患者さんらがいる。また、合併症を抱える認知症の患者さんは行き場がないので介護療養病床で対応していく必要がある。こうしたことについて具体例を示しながらアピールしていきたい。 

 一言加えると、「看取り機能」をどのように評価するかについては意見が分かれる。例えば在宅療養支援診療所の評価では、「看取り数」に着目しているが、「数」が多いことがすなわち「機能」ではない。看取りのプロセスをきちんと評価し、機能を見てほしいとの声が多く聞かれる。「介護療養病床でお亡くなりになった」ということをもって評価すべきものではないと考えている。
 



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