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2014年 年頭所感 日本慢性期医療協会会長 武久洋三

Posted By araihiro On 2014年1月1日 @ 8:51 AM In 会長メッセージ | No Comments

 皆様、新年明けましておめでとうございます。日本慢性期医療協会も22年目を迎え、私が会長に就任させていただいてから6回目の新年となりました。今年度は慢性期リハビリテーション協会の立ち上げ、リハビリテーション指示医認定講座、介護職員等によるたんの吸引等の実施のための研修、総合リハビリテーション講座、日本長期急性期病床研究会の立ち上げ等、新たな事業が5つも増えました。これもひとえに会員の皆様方のご協力のおかげであると感謝するとともに、慢性期医療がこれからの日本の医療を支えていかなければならないという責任の重大性を感じております。
 
 さて、次期診療報酬改定に向けて厚生労働省は急性期医療を担う医療機関の条件として、24時間の救急受入体制、重度な患者への総合的かつ専門的な医療の提供、急性期後の患者の後方病床等への退院支援などが重要であるという考えを示し、急性期医療の評価として現行の総合入院体制加算の要件を強化する案が提示されました。しかし、この要件を全て満たすことが出来る急性期病院は、現状ではわずかしかありません。
 しかし、巨大化した7:1病床をいままで不用意に何の縛りもなく導入し、平均在院日数19日とは言うものの特定除外という骨抜き措置があったため、平均在院日数の縛りなんてなかったのと同然ではないでしょうか。また看護必要度についても全患者のわずか15%がA項目の2つをクリアしていればよく、療養病床のほうがより重症な患者を受け入れているという結果も得られました。
 いままで「ぬるま湯」につかりっぱなしだったのが、今度はどうやら本気になって動き出したということでしょう。
 
 あとわずか10年ちょっとで2025年問題に突入することは誰もかもわかっているのです。
 1980年に想定した30年後の2010年の人口構造と、これからの先の30年後では人口構造は全く異なります。少なくとも2025年には現在より入院患者が3倍以上に増えますが、病床数を増やすことは難しいので、1人あたりの入院期間を3分の1程度に短縮しなければなりません。これは急性期だけでなく、回復期や慢性期の病院や介護保険施設も同様です。
 入院期間が短縮され、1人当たりの医療費も下がることによって、最終的には在宅に集約されます。そうなると急性期病床の削減により、急性期治療後の受け皿となる病床が必要となってまいります。多分1年以内に7:1の病床は20万床を切るのではないでしょうか。公的病院がこぞって亜急性期病棟になだれ込むことになるでしょう。
 それらの急性期後を担う新たな(仮)亜急性期病床では3つの機能が必要となります。それは、急性期の治療を終えた患者を受け入れ、継続的治療やリハビリを行う「Post Acute」機能、高齢者施設や在宅療養中に急性増悪した軽・中等度の救急患者を受け入れる「Sub Acute」機能、受け入れた患者に積極的リハビリを行い、自宅や施設に帰れる状態まで回復させる「在宅復帰」機能です。これは正に当会が提唱してきた「長期急性期病床」の考えそのものです。リハビリ力の弱い、にわか仕立ての亜急性期病棟に明日はありません。
 もはや「一般病床」と「療養病床」に分ける意味はありません。一般病床にも長期療養患者が入院していて、療養病床にも急性患者や急性期治療後の重症患者が多く入院しています。療養病床のようにスタッフの少ない病院で「Sub Acute」の患者を診られる訳がないと考える人がいますが、療養病床が十分な医療機能を備えていることを認めたくないだけではないでしょうか。重症患者を多く受け持つ慢性期病院では、医師、看護師や介護職員を基準以上に手厚く加配して対応しているという結果も既に出ています。
 
 病床機能再編について、「急性期」や「亜急性期」など病床の機能名について様々な議論がなされていますが、私たち医療機関の役割は患者を早く適切に治療することです。病床の名称など枝葉末節にこだわっている場合ではありません。病床にどんな名前をつけたところで、病院の機能にあった患者しか来院しないのです。
 また、慢性リハビリについて切り捨てる動きがありましたが、3月末までの経過措置となっていた要介護被保険者等に対する医療保険での維持期リハビリについて、4月以降も延長することが提案されています。「Post Acute」も「Sub Acute」も在宅復帰のためには、リハビリは必須のアイテムです。算定日数を超えて継続したリハビリを行うことにより、更なる改善が見込まれる結果も既に得られています。急性リハビリや回復リハビリも重要です。脳卒中発症後、急性期治療が落ち着いたら、少なくとも発症後2週間以内には回復期のリハビリを開始すべきです。
 一方、新たな地域医療計画が始まれば、病床が過剰な地域では、国からではなく、都道府県知事から病床の削減を迫られることもあるでしょう。しかし、医療団体は一致団結して地域医療を守っていかなければなりません。我々は今後ますます増大してくる慢性疾患に対して良質な医療を提供できなければ日本の医療は成り立たないのスローガンのもと、国民のために本当に良い医療が提供できるように努力しなければなりません。
 
 本年も新たなる活躍に向けて、会員一同とともに邁進する所存であります。更なる会員の皆様からのお力添えをいただきながら良質な慢性期医療を推進していきたいと思っておりますので今後ともよろしくお願い申し上げます。
 


 



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