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記者会見(10月10日)のご報告

Posted By araihiro On 2013年10月14日 @ 7:23 AM In 会長メッセージ,協会の活動等 | No Comments

 日本慢性期医療協会(日慢協)は10月10日に記者会見を開き、武久洋三会長が次期改定に向けた慢性期医療の方向性について日慢協の見解を述べました。日本長期急性期病床(LTAC)研究会の発足について池端幸彦・副会長が報告したほか、11月14、15日に開催される「第21回日本慢性期医療学会・東京大会」で大会長を務める富家隆樹・常任理事が大会にかける思いを語り、慢性期リハビリテーション協会の設立や各種研修会の報告もなされました。会見の模様をお伝えいたします。
 

 日本長期急性期病床(LTAC)研究会 第1回研究大会開催報告 
 

[武久洋三・会長]
 いつも多くの方々にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。では早速、記者会見を始めさせていただきます。まず、日本長期急性期病床研究会の第1回が9月29日に開催されましたので、池端副会長からご報告させていただきます。
 
[池端幸彦・副会長]
 では早速ですが、ご報告させていただきます。お手元に「日本長期急性期病床研究会第1回研究大会」という冊子があるかと思います。詳しくはそちらをご覧ください。平成25年9月29日に、当東京研修センターで「日本長期急性期病床研究会」、通称「LTAC研究会」の設立総会と第1回研究大会が行われました。総会では、公立昭和病院の院長である上西紀夫先生が初代会長にご就任されました。

 続いて研究大会に入りました。当初の予想を大幅に上回り、200名近い方々にご参加いただきました。この研究会の特長は、主に超急性期病院の方々が中心になって発足したという点にあります。高度急性期病院の受け皿として長期急性期の機能等が必要ではないか、そういう議論の中で生まれた会であるということです。

 当日は、研究会の事務局を務めております日本慢性期医療協会の武久会長がLTACに関する考え方をご説明したほか、指定演題、そして午後にはシンポジウムが行われました。指定演題としては、東京、大阪、徳島、熊本等で急性期病院や慢性期病院の立場から、そして急性期・慢性期の連携システムの実践例などをご報告いただきました。
 
 午後は厚生労働省医政局長の原徳壽様に、大変お忙しい中にもかかわらずお越しいただき、記念講演として今後の病院機能の在り方などを縷々ご講演いただきました。それを受ける形で、高度急性期病院の代表である昭和大学医学部の救急医学講座教授の有賀徹先生、そして全日本病院協会副会長の猪口雄二先生、当会の会長がそれぞれの立場でこのLTACに関する思い、あるいは今後の展望等についてお話しいただきました。
 
 非常に盛り上がった会でありました。今後の超高齢社会を見据え、日本の医療をどうしたらいいのか、急性期医療と慢性期医療の連携はどうあるべきかを多くの方々が考える良い機会となり、とても内容の濃い大会になりました。高度急性期病院の後方を担う医療機能の名称については、「亜急性期」「長期急性期」などいろいろな言い方があります。「LTAC」という呼称も、ご承知の通り、アメリカから持ってきましたが、「日本版LTAC」という機能について、名称は別として、そうした機能がこれから絶対に必要であるということは一致したご意見であったと感じています。

 この盛り上がりを受けて、第2回大会を来年9月末に済生会熊本病院が主幹となって熊本大会を開催することに役員会で決まりました。ぜひ、多くの方々のご参加をお待ちしております。以上、簡単ですが私からご報告させていただきました。では武久会長、補足があればよろしくお願いします。
 
[武久洋三・会長]
 ポスト・アキュートについて、厚労省医政局は「回復期」に位置づけましたが、保険局は診療報酬上、「亜急性期入院医療管理料」の枠組みで検討を進めていますので、「回復期」なのか「亜急性期」なのか、いまだに混とんとした状況です。

 本日、中医協の入院医療等の調査・評価分科会が開かれまして、平成24年度・25年度調査を踏まえた最終報告を取りまとめました。その会合で、宇都宮啓医療課長が「医政局の確定を待っていては26年度の診療報酬改定には間に合わない」との意向が示されました。保険局は独自に、従来の方針どおり改定作業を進めるということをはっきりおっしゃっております。
 
 9月29日の研究大会で記念講演した原医政局長は、来年の通常国会に提出する第6次医療法改正案に盛り込む「病床機能情報報告制度」について、「法律ではなく、省令で出します」とおっしゃいました。すなわち、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の4つの機能区分は、法律には書き込まず省令で明記する意向を示しました。次期改定の時点では、この4分類と診療報酬とはパラレルではない。いずれは収れんしていくでしょうが、医療法上は必ずしも整合性が取れるわけではないというようなこともおっしゃっておりました。従いまして、急性期機能的な部分については、診療報酬が先行する方向であると言えます。
 
 入院医療分科会がまとめた最終報告書は、近く開かれる中医協総会で示されるようですので、そこでまた本格的な議論が始まると思っております。
 

 慢性期リハビリテーション協会について 
 

[武久洋三・会長] 
 慢性期のリハビリテーションに対する理解を広めようと、7月11日に設立しました。リハビリ算定日数の6カ月を過ぎた後の6カ月間も慢性期リハビリテーションを認めてほしいという主張です。現在、急性期病院から回復期リハビリ病院や慢性期病院に転院してくるまでに、すでに2カ月以上経過しているケースが非常に多いのですが、それなのに3カ月程度しかリハビリテーションができない。これでは、算定日数の期限内にリハビリテーションの効果が十分に出ません。
 
 日本慢性期医療協会で調査したところ、算定日数制限を過ぎた後の6カ月間で、大幅に非常に回復しているというデータが出ています。そうしたこともありまして、「慢性期リハビリテーション」という1つの重要な領域として、日本慢性期医療協会が中心となって訴えていくべきであると考え、慢性期リハビリテーション協会が生まれました。
 
 最近、会員病院などの報告によりますと、慢性期のリハビリテーションが大幅に減点されている状況があります。慢性期病院や回復期病院の診療報酬がほとんど包括されている中にあって、リハビリテーションが出来高であるということもあり、大幅に減点されているケースもございますので、その是正を求めるという理由もあります。

 慢性期リハビリテーション協会の活動状況としましては、まず9月の21~23日までの間、「総合リハビリテーション講座」を開催しました。100名を超える参加者があり、非常に活気がありました。PT・OT・STが、他の療法士の基本的な技術を学ぶという研修です。

 11月9日には、医師を対象にした「リハビリテーション指示医認定講座」を開催する予定です。ややもすると一般の医師は、リハビリテーションが苦手な人が多い。リハビリテーション専門医は非常に数が少ないのですが、医師がリハビリの指示を出さなければいけない場合が非常に多いため、適切な指示を出すために勉強しましょうという講座です。すでにもう70人以上の申し込みがあります。このほか、来年3月15日に「慢性期リハビリテーション学会」を開催します。当日は、様々な症例報告や学会発表、シンポジウムなども行う予定です。
 

  研修会のご案内  
 

[富家隆樹・常任理事]
 「HOSPEX JAPAN」が10月23~25日に開催されます。毎年恒例となりましたが、慢性期医療のエッセンスを皆さんにお伝えすべく、日本慢性期医療協会のセミナーを開催します。今回は、6つのセミナーを予定しており、例年非常に人気の高いセミナーになっております。これを聴いていただければ、慢性期医療の現在のトピックやエッセンスが分かるような内容になっております。ぜひ、たくさんの方に聴いてほしいと思っております。事前登録制ですが、空席があれば当日参加も可能です。

 続いて第8回の慢性期ICU看護レベルアップ研修をご紹介します。日慢協の研修の中でも特に人気が高く、そして独自のシナリオシミュレーションとロールプレイングという、他の研修に類を見ないユニークな研修になっています。そこで得られる満足度が非常に高いと好評の研修です。例えば、「多重課題」というシミュレーションでは、4人床の部屋を1人で担当しているという設定で、患者さんが胃ろうを自己抜去すると同時にナースコールを押して腹痛を訴える。もう1人の患者さんは「トイレに行きたい」と言ってナースコールを押す。そのような多重課題にナースが直面した時、どうクリアするか。「慢性期ICU」の名にふさわしい、非常に高度な研修内容になっています。受講生の中には途中でくじける人もいますが、研修を終えた時には「受けてよかった」と笑顔で帰っていきます。非常に人気の高い研修ですので、毎回キャンセル待ちの状況です。

 また、11月30日から12月1日にかけて行われる「第2回看護管理者研修会」では、慢性期医療における看護管理者の役割を学びます。現在、管理業務を行っている看護師のほか、将来管理業務に携わる看護師が対象です。研修終了後のアンケートでも好評です。そうそうたる有名な看護部長の方々を講師にお招きして、現場でどう対応していくべきかを具体的に伝えていただけます。現場の生の声を踏まえた研修となっており、非常に人気があります。
 
 次に、「第2回介護職員等によるたんの吸引等の研修」についてご説明します。11月30日から12月6日まで行います。一昨年から県単位で実施している事業を当会でも行うようになって2回目になります。県単位で行う事業の問題点として、実習する場所がないことが挙げられます。研修を受けても実習を行っていないために50時間受講しても実際に現場で行えないとか、たんの吸引や胃ろうの接続が行えないという状況があります。こうした中で、この研修では、医療団体としての特性を生かし、実習まで終了していただき、実際にたんの吸引まで行えるような介護士を養成しています。介護職員がレベルアップできますし、キャリアラダーにも使える研修になっています。
 
 12月からは、「第8回慢性期医療認定講座」を2月まで計6日間の日程で開催いたします。この講座はもう8回を数えました。厚労省が検討を進めている「病床機能報告制度」などでも、ようやく「慢性期」という言葉が使われるようになってきております。3カ月の間に24単位の講義を受けるカリキュラムで、非常にハードな研修内容になっておりますが、これを受講すれば「慢性期医療とはどのようなものか」ということが理解していただけるはずです。そして、当講座を受講して慢性期医療について理解した方々を日本中に広めていきたいとの思いもあります。 

 最後になりますが、「第10回医療介護福祉士認定講座」をご紹介いたします。先ほどご説明した、たんの吸引などを学ぶ講座とは違って、介護士がチーム医療の一員となるために医療の知識をより深めていただくことが、大きな目的の1つです。慢性期医療の現場で、介護職員がチーム医療の一員となるために必要な医療知識を、座学のみでなく実習として体に染み付けることのできる講座です。カリキュラムは非常にハードですが、終わった後の満足感は非常に高い。一枚も二枚も皮がむけて現場に戻ることができる認定講座となっています。これほどまでにコメディカルに対して研修等の事業を充実させている医療団体は日本慢性期医療協会しかない、と自負しております。研修の案内は以上でございます。
 

 第21回日本慢性期医療学会 東京大会  
 

[富家隆樹・常任理事]
 来たる11月14、15日に「第21回日本慢性期医療学会」を、そして「第3回アジア慢性期医療学会」を同時開催いたします。その東京大会の大会長を私が務めさせていただきます。先ほど、様々な研修をご案内いたしましたが、そのさらに先を行く慢性期医療、最先端の慢性期医療を研さんする場として、この学会が位置づけられておりますし、そんな学会にしたいと思っております。5つのシンポジウムを用意し、著名な先生方にご参加いただきます。多彩なテーマに沿って、認知症や地域包括ケア、病床機能分化の行方など、ご講演いただく予定です。

 このシンポジウムは、磨かれたダイヤモンドだと思っております。そして、まだ磨かれてない宝石が700の一般演題の中に存在します。そうした数々の宝石たちが、この大会で大きく磨かれて光り出すと考えています。最先端の慢性期医療を知るためには、ぜひこの700演題を聴いていただきたい。そうすれば、これからの慢性期医療の未来が見えてくるのではないかと思っております。
 
 記念講演には、ダウン症の書家、金澤翔子様と、そしてお母様の金澤泰子様にお越しいただきまして、「書道がくれた希望 ─ 夢をあきらめない」(仮題)というテーマで、揮毫(きごう)もしていただく記念講演を予定しております。ぜひたくさんの方に来ていただきたいと思います。今、事前申込で3,000人を超える規模になっています。参加人数、演題数、そして企業展示もすべて過去最大の大会になる予定です。
 

 平成26年度診療報酬改定に向けた慢性期医療の方向性 
 

[武久洋三・会長]
 記者会見資料をご覧ください。一般病棟と療養病棟の長期入院に関する厚生労働省の調査によりますと、療養病棟入院基本料1では、看護必要度のA項目が2点以上の割合が66%という病院があることからも、療養病棟では非常に重度な患者さんを診ていることが分かります。日医と四病協が実施した調査でも、たんを吸引したりリハビリを行ったりしている慢性期の患者さんを7対1、10対1などで診ている実態が明らかになりました。すなわち、重症の患者さんを療養病床で診ているということです。
 
 そこで、こうした重度の患者さんを療養病床の看護配置で対応できるかどうかを当協会で調査しました。日慢協の理事以上の役員が現在60名おりますので、その先生方に緊急調査をお願いして、5日間ぐらいで70病院に回答していただきました。回収率は80.4%で、全体で1万3,877床を対象に実施しました。医療療養病床(20:1)が5,524床で最多となっています。
 
 この調査によりますと、医師の加配につきましては、平均加配が42.6%でした。療養病床では、医師の法定は48対1ですが、平均加配42.6%を計算しますと33対1ぐらいになることが分かりました。また、看護師では、医療療養病棟20対1が「16.85対1」で、25対1が「19.28対1」でした。介護職員の加配も加味しますと、マンパワーとしては「8.5対1」や「9対1」で、7対1に準じるぐらいのマンパワーを要しているということが分かりました。
 
 医療区分で見ますと、医療療養病棟(20:1)の医療区分の平均が2.2でした。医療区分2、3の比率は、医療療養病棟(20:1)で約90%。医療療養病棟25対1では、48.8%です。ADL区分で見ましても、非常に要介護度が重い人を診ております。寝たきり度も高い数値であることが分かります。このように、療養病床で非常に重い患者さんを診ているということは、どの調査でも同じような傾向になっております。

 しかしながら、急性期病院から回復リハビリ病院や慢性期病院に移るまでの間が長い。都内にある3つの慢性期病院へ入院した患者について、紹介元の高度急性期病院での在院期間を調べたところ、急性期病院に入院している期間が2カ月以上という病院が多いことが分かりました。こういう状況では、脳血管障害の患者さんらに十分なリハビリが提供されないまま慢性期病院などに転院しても、すでに2カ月以上の期間が経過してしまっているわけですから、残り3カ月少々の期間で回復させるのは至難の業であると言えます。

 ところが、6カ月の算定日数を経過した後もリハビリを継続したらどうでしょうか。これを調べたデータがあります。前半の6カ月と後半の6カ月のどちらが良くなったかと言いますと、廃用性症候群の場合は後半の6カ月で非常に良くなっていきます。脳血管や運動器など他の群でも4割前後の改善率が見られます。従いまして、6カ月の算定日数でスパっと切ってしまった場合、これは大変なことになるということです。 
 ADLの推移

 現在、「維持期リハ」という名前で、月13単位のリハビリテーションが認められておりますが、13単位未満の患者さんと13単位以上の患者さんとを比較しましたら、6カ月後に大きな差が出ています。何が改善したかと言いますと、ADLです。「移乗(ベッド・車椅子)」や「移乗(トイレ)」、「移動」などが非常に良くなっています。

 このような実態を踏まえ、これからの慢性期病院に求められる医療機能をどう考えるべきでしょうか。厚生労働省の中医協・入院医療等の調査・評価分科会では、「亜急性期はポスト・アキュートだけを診ればいい」とか、「サブ・アキュートは急性期が診るんだ」という意見を他の病院団体の委員らがおっしゃっています。しかし、日慢協で実態を調べましたところ、慢性期病床や回復期リハ病棟などにポスト・アキュート(高度急性期病床を含む急性期病床)から来た患者さんが49.6%(6,426名)、サブ・アキュート(特養、老健、居住系施設、在宅)から来た人が45.6%(5,923名)でした。

 これを地域別に見ますと、東京都はポスト・アキュートの病床が非常に少ないのですが、地方ではサブ・アキュートを非常に多くの慢性期病院で受けていることが分かりました。ということは、回復期なり亜急性期の基本として、サブ・アキュート抜きには考えられないということは明らかです。 
 一般病床と療養病床における入院基本料等加算の算定について

 私が平成24年度改定の時から繰り返し申し上げているのは、一般病床と療養病床との間でいわれなき差別があるということです。これを解消していくことが、療養病床を持つ病院団体として1つの大きな使命だと思っております。一般病床と療養病床における入院基本料等加算の算定について、平成24年度改定で療養病床にも認められた加算があります。ところが、栄養サポートチーム加算に関しましては、療養病床では期限が付いております。むしろ急性期病院は平均在院日数が2週間ですから、ここに当然期限が付くべきではないかと思います。療養病床は90日から180日ということですから、期限を付けるのはむしろおかしいのではないでしょうか。「(準)超重症児(者)入院診療加算」についても、一般病床は経過措置があるのに療養病床にはない。つまり、一般病床と療養病床の間における大きな差別は全く解消されていない状況です。

 こうした診療報酬について改善を求めていきたいと思っております。今年度、私は日本病院団体協議会(日病協)の議長を務めておりますので、日病協としてトータルで要求することと、日慢協として独自に要求することとは当然違いますが、かねてから申しておりますように、急性期または高度急性期の病院に、急性期ではない患者さんが非常に多く入院している状況を改善し、早くポスト・アキュートの病床や在宅に患者さんがシフトしていくようなシステムをつくらなければなりません。今後、年間の死亡者数が1.5倍になり、入院患者さんが3倍以上に増えるような緊急事態の中で、このままでは2025年を乗り越えられないと私は繰り返し申し上げております。
 
 そうした仕組みを早急に整備するため、厚生労働省は病床機能の分化を進めております。日慢協は、そうしたベクトルに対して大いに賛成でございます。急性期から慢性期へ患者さんが流れやすいシステムが必要です。急性期病院の入院料は、入院期間が短い間は非常に高いですが、長期化したら大幅に安くするとか、あるいは早く慢性期に紹介すれば急性期病院の評価が上がるとか、慢性期病院の受入を評価するとか、そうした診療報酬改定を望みます。
 
 平成24年度改定では慢性期病院での受け入れが評価され、入院初期の2週間は1日3,000円を頂けることになりましたが、これに対しては増額を要望していこうと思っております。また、慢性期病床でも1週間や2週間で退院が可能になった場合には、「早期退院加算」のような評価も要求していきたいと考えております。さらに、在宅から患者さんを受けたときには、評価していただきたいと思っております。

 高度急性病院では、1日5~7万円の入院費が掛かりますが、慢性期病院では2~3万円です。その差が3万円ほどあります。そうしたことも併せ考えまして、治療後の患者さんはスムーズに慢性期、回復期に移るべきだという主張をかねがねしております。現在、中医協分科会の議論はそのような方向で進んでいるところです。
 
 一方、慢性期リハビリテーションにつきましては、先ほど申しましたように、算定日数制限から6カ月間は認めてほしいということを要望します。在宅復帰率がいい所には手厚く評価してほしいと思います。平均在院日数が短い所も評価していただきたい。そのほか、いろいろありますが、先ほど申しましたように、看護師および介護、医師等も多く加配しておりますので、加配をした場合には評価していただきたい。例えば、2割以上加配した場合には加配加算というものをお願いできればいいと思っております。
 
 また、BPSDに関しましては、慢性期病床であろうと、高度急性期病院、救急病院であろうとBPSDの患者さんが担ぎ込まれたら非常に困るわけです。日慢協からの要望として出そうと思っておりますが、あらゆる病床に対してBPSDについてはBPSD加算、受け入れ加算というものを付けるべきではないかと思っております。
 
 医療区分については、いろいろと問題点がありますが、今回もなかなか時間がないために大きな改正はできないということで大変残念でございますが、DPCでは看護必要度が重要な条件になっていますので、急性期後の患者さんを診る亜急性期病床は看護必要度で評価していただきたいと思います。さらに慢性期病床も「看護必要度の慢性期版」というものをつくっていただければ、高度急性期から慢性期まで看護必要度で動かしていくということができるかしれませんので、そういうことも要望していきたいと思っております。
 
 外部受診につきましては、透析や他の診療区分にない分につきましては、もう少し減算を緩めていただきたいと思います。
 
 高額薬剤につきましては、DPCで出来高算定が認められている薬剤は、慢性期病床でもDPCと同じ出来高算定を認めていただきたい。急性期病院から2、3週間で慢性期病床に来ますと、急性期病院で出された高額なお薬を途中で切るわけにはいきませんので非常に対応に苦慮するということがあります。すなわち、50万円程度しか入院報酬がない中で、15万円も18万円も1つの薬剤だけで掛かってしまうということでは、実際100人に1人ぐらいでならできますが、そうした患者さんが多くなればとても経営が立ちゆかないという問題もございます。
 
 そのほか、在宅療養の支援について、地域のサブ・アキュートを受けるのは在宅の後方病院だろうと思いますので、ここが亜急性期機能と重なってくると思います。従って、在宅療養を支援する病院の評価を高くしていただきたい。
 
 また、20対1と25対1というように、療養病床の入院基本料が1と2に分かれていますが、20対1は医療区分2、3が8割という厳しい縛りがあります。しかし25対1は、いかなる縛りもありません。ケアミックス病院の療養病床で発熱して病状が悪化しますと、全部一般病床で治療して、治ったら25対1の療養病床に帰すというようなキャッチボールが現実に行われています。これはアメリカでは制限されていますが、日本では無制限になっています。療養病床では急性肺炎も急性の尿路感染症も診ておりますので、一般病床に移さなくても治療できる体制があるにもかかわらず、安易に急性期と慢性期のキャッチボールを院内で行っているということに関しましては、少し変えたほうがいいと考えております。
 
 近年、慢性期病院でもがんの患者さんが非常に多くなっています。現在、麻薬を使ってない人はどのような末期がんの方でも医療区分1になっていますので、これについては考慮していただきたい。すなわち、長期入院に対しては、急性期も慢性期も多少入院評価が下がる。特に急性期病院では、1カ月以上入院しているような患者さんは入院基本料を大幅に下げるようにすれば、患者さんが早く慢性期病院に移るという方向に動くと思われます。そこで、早期の退院加算というようなものも大きく影響してくるかなと思います。

 このようなことを当協会の医療保険委員会で最終的にチェックを行い、11月頃には要望書を出したいと思っています。以上、平成26年度診療報酬改定に向けて、日慢協として要求していく考えです。私からは以上でございます。
 



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