認知症患者の人権と尊厳を守るには

役員メッセージ

認知症患者の人権と尊厳を守るには

3. 池元好江氏(北海道・定山渓病院病棟師長)

 池元氏も現場からの声として、施設の紹介と事例報告があった。

 定山渓病院の認知症ケアは「身体抑制廃止の取り組み」から始まり、平成11年7月29日に「抑制廃止宣言」を公表され、患者・家族・職員が常に意識するようにし、ホームページにも掲載。内外に向けその思いをアピールしてこられた。それを具現化させるための工夫を紹介された。

 身体拘束をしないための工夫として、①個別性・自尊感情に配慮したコミュニケーション、②観察による効果的な見守り、③可能な限り経口からの食事、④心地よいリハビリテ―ション、⑤低床ベッドの利用、⑥ナースコールセンサーマットの活用、⑦専門病院の受診、⑧ご家族の理解と協力体制──等を、具体的目標とし努力してこられた。

 一方、在宅復帰の可能性を再評価されていた。さまざまな合併症を持って入院されても、それらが改善されることにより、退院可能な状態になることがある。そのような場合、積極的に在宅に向けトレーニングされている。

 その後、症例報告がなされた。

 ・ 事例1:70歳・男性、進行性核上性麻痺、認知症(前頭側頭型)仮性球麻痺

 このケースは進行性で精神科入院抑制処置され、それが苦痛で転院してきて、不穏時は車いすで対応、徘徊は無理して止めず、ケアへの拒否は時間をおいてから見守り、食事は無理強いせず、おやつで捕食する等の工夫を加えて介護してこられた。最終的には家族の意向で、延命処置は取られなかった。よくある認知症例で理想的な対応をされたと思える。

 ・ 事例2:非ホジキンリンパ腫、胃幽門狭窄、脳梗塞後遺症、アルツハイマー型認知症

 長期の治療後入院してきた例で、積極的な家族の協力があり、さらにスタッフの関わりが上手くでき、非ホジキン病の加療を他院で受けながらも、当該施設を安住の場と思い、最期まで入院継続を望まれたという、いわば模範的なケースだった。

 最後に緊急連絡体制をつくり、ケアマネジャーや地域包括支援センターと協調し、在宅復帰を成功させた一例も報告された。

 結論としては、認知症患者一人ひとりの心の安定と安全を守るために、常に何をするべきかを考えて援助している。在宅復帰の可能性のある患者は早期に見極めて、住み慣れた環境に戻し、心身の機能が最大限に発揮した暮らしを継続するための支援をする。そうすることにより、認知症患者の人権と尊厳を支えられると話された。

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