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「本人が延命を望むなら認めるべき」 印南一路氏が講演

Posted By araihiro On 2013年6月22日 @ 1:03 PM In 協会の活動等,官公庁・関係団体等 | No Comments

 中央社会保険医療協議会(中医協)の公益委員で慶應義塾大学総合政策学部教授の印南一路氏が6月21日、日本慢性期医療協会の第38回通常総会で「今後の医療体制を考える」と題して講演しました。印南氏は、医療機関が病床数に依存しない診療報酬の在り方として「地域医療への貢献や良質な医療の提供などを評価すべき」と提言。終末期医療をめぐる問題にも触れ、「何歳でも、本人が救命や延命を望むならば、それを認めるべきだ」と述べました。 

 印南氏は「医療政策の3本柱」として、医療提供体制(物理的アクセスの保障)、医療保険制度(財政的アクセスの保障)、診療報酬制度(良質な医療の保障)──の3つを挙げ、民間主体の医療提供体制をとる我が国では、診療報酬制度の果たす役割が特に重要であると指摘しました。そのうえで印南氏は診療報酬による経済的なインセンティブによって病床過剰や地域偏在などを是正していく必要性を説きました。
 
 一方、医療提供体制については、「計画性が欠如」「公私の役割分担が不明確」「マンパワー不足」などの問題点を指摘。医療保険制度については、「パッチワークだらけで審査能力が弱く、財政責任が不明確」と指摘しました。特に、現在の診療報酬と医療提供体制の悪循環を指摘し、「病床が過剰のままで入院基本料を上げると医療費が増えるので上げられない。一方、医療機関としては、入院基本料が安いので入院期間を延ばす等の対応をせざるを得ない。結果として社会的入院や不適切な入退院が減らない」と問題視しました。

 今後の保険財政については、「高齢化や医療技術の進歩を背景に医療費は増加していく」との見通しを示し、「亜急性期、慢性期医療施設、介護施設の統合単純化を行い、連携の必要性そのものを減らすべき」と提案。医療・介護サービスの提供体制として、「急性期病院」「長期急性期」「医療介護複合施設」などに再編して、それぞれを機能強化する必要性を述べました。
 

■ 「長期急性期」の考え方、「理念的に正しい」
 

 急性期病院の後方を担う病床として日本慢性期医療協会が提唱している「長期急性期」の考え方について「理念的に正しい」としながらも、議論になっている「地域多機能病床(仮称)」や地域一般病棟との関係など調整すべき課題があることも指摘しました。

 印南氏は、診療報酬制度が今後進むべき方向として「ストラクチャー指標から、プロセス指標やアウトカム指標を意識したものに移っていく。慢性期医療の評価もプロセス指標やアウトカム指標を加えて見ていくことになるだろう」とし、院内感染に関する改定が良い結果をもたらしたデータなどを示しながら「診療報酬は点数評価の条件付けを通じて医療の質向上に実際に貢献する」と改めて強調。次期改定に向け、中医協の公益委員として「現場の声をうまく汲み上げて細かく対応していきたい」と抱負を述べました。
 

■ 「何歳でも、本人が延命を望むならば認めるべき」
 

 講演後の質疑で武久会長は、「一般病床の社会的入院も療養病床の社会的入院もいずれも問題があると思うが、どのような改善策が考えられるか」と質問。印南氏は「保険制度を改定するうえでは、(診療報酬改定を所管する)保険局と、(医療提供体制を所管する)医政局との緊密な連携が必要であり、医政局での議論を踏まえて診療報酬で手当てしていくことが望ましい」と回答しました。さらに「抜本的な解決策としては、病床数を基準にした診療報酬ではなく、地域医療への貢献や良質な医療の提供などを評価すべき。病院経営者も病床数維持にこだわる必要はないのでは」と述べました。
 
 終末期医療をめぐる問題にも言及し、「75歳でも何歳でも、十分な情報提供をした上で、本人が救命や延命を望むならば、本人の意思を尊重すべき」と述べ、本人の意思が不明な場合に備えて、生前から定期的に本人の意思を確認する制度をつくるべきと提案。「延命を望む場合には、その部分は自己負担にするという制度が導入されることも将来的には考えられるが、私自身はそういう考えではない。あくまでも本人が延命を望むならば、それを認めるべきだ」と述べました。
 



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