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平成25年度第1回入院医療等の調査・評価分科会 報告

Posted By araihiro On 2013年5月17日 @ 2:39 PM In 会長メッセージ,審議会 | No Comments

 平成25年5月16日に今年度第1回の入院医療等の調査・評価分科会が開催され、武久洋三会長が委員として出席されました。
 まず、平成24年度に実施された一般病床、療養病床の調査結果について、事務局である厚労省医療課からの説明が行われました。一般病床7:1の平均在院日数は、平成21年以降短縮の傾向が見られ、18日以下という要件と合致して、約7割の病院の平均在院日数は15日以下となっています。平均在院日数の短い病院の特徴には、循環器や整形外科の専門分野に特化している、手術、検査が多いという傾向が出ています。逆に、平均在院日数の長い病院は、手術件数が少ない、病床規模が小さい、介護施設等からの入院が多いという傾向にあります。また、特定除外患者の病態を医療区分で見れば、概ね区分2・3に対応しているということでしたが、レセプト請求は、一般病床で特定除外患者を診た場合は約75万円、医療療養20:1で診た場合は約54万円であり、20万円もの差が出ています。特定除外の割合を見れば、7:1では入院患者全体のうち3.7%、10:1では6.5%という少ない割合のため、この特定除外患者を平均在院日数に入れた場合でも、7:1では、21.0日(含めない)⇒22.5日(含める)、10:1では同じく22.0日(含めない)⇒25.2日(含める)へと、それほど大きな増加にはならないという試算も示されました。

以下、議論の概略
【調査の回答率が低いことについて】
石川委員(日本医師会常任理事、千葉県勤労者医療協会理事長):回収が悪いということはデータに偏りがあるのではないか。

安藤委員(日本病院会常任理事、西福岡病院理事長):回答病院と非回答病院の属性の比較が必要ではないか、有意差の検出がなされていない。

藤森委員(北海道大学病院地域医療指導医支援センター長):地域性の分析がされているのか。

武久会長:今あるデータで議論すべき。

高智委員(健康保険組合連合会理事):データを出さないのは調査実施側の問題ではなく、病院側の問題。データの数がもっと必要というのであれば、自分たちで出すように努力するべき。

筒井委員(国立保健医療科学院統括研究官):回答してくれた病院を正当に評価するべき。有意差は出せるだろうが出しても意味はないと思う。

厚労省医療課:これまでの改定は、回収できた範囲でのデータに基づいて改定が行われてきた経緯があるが、データの少なさが改定結果に悪影響を及ぼしたとは思われない。

【平均在院日数について】
神野委員(全日本病院協会副会長、社会医療法人財団董仙会理事長):7:1で入院日数が長いところは、中小病院であったり、介護施設からの入院が多いという結果が出ているが、これは患者像の違いであり、一概に入院日数が長いのはダメだということは言えないのではないか。

石川委員:平均在院日数の議論は限界にきている。介護施設から7:1に入院してくる患者の状態像は明らかに違っている。しかし、地域によっては7:1でそういった患者を受けざるを得ないという実情があることも事実である。

武久会長:例えば寒冷地であれば、雪の降る時期は入院するというようなことも行われており、日本には入退院の基準がないということが問題なのではないか。

【看取りの機能について】
筒井委員:特養の看取り機能を強化して体制整備をしてきているはずだが、それでも特養から医療機関への退所が約28.9%、入院先での死亡が34.0%を占めている。特養から病院に入院させなければならない理由を把握し、対策をとることが必要ではないか。

嶋森委員(東京都看護協会会長):介護施設で看取りができる機能を備えていくことが必要。

【在宅復帰について】
佐栁委員(国立病院機構関門医療センター病院長):在宅復帰率、あるいは生活復帰率という方がよいかもしれないが、この復帰率は、これからのあり方を考えるために重要な視点である。

石川委員:在宅がよいとはいっても、自宅では介護する人手がなく、自宅への復帰は先細ってくる可能性も高い。居住系施設を含めて、いろいろな形での受け入れ先との連携が必要になってくるだろう。

神野委員:全部が在宅に行くのがよいというわけではないので、そこは慎重にみなければならない。

嶋森委員:訪問看護等の充実により、在宅でもある程度の重症患者の療養が可能となっている。
 
【7:1はどうあるべきなのか】
神野委員:介護施設で、夜間、休日に具合が悪くなれば搬送先は7:1にならざるを得ないという理由もある。7:1で、本当に急性期を診ているところは加配を行っている。

武久会長:介護施設から救急車で7:1に搬送されたとしても、初期の治療が終われば7:1でなくてもよいはずであるから、Post Acuteの病院に転院させるべきである。今後、在宅療養の後方病院を整備していけば、7:1に搬送されなくても済むようになると考える。

藤森委員:7:1で診るべき患者のイメージは、複雑性の高い疾患を手厚く診るということではないか。

神野委員:今回の調査には、医療区分の記入が求められたが、医療区分は慢性期の患者の評価区分である。急性期疾患を診ている7:1に、調査票への答えを求めても無理があるのではないか。人工呼吸器を装着されている患者には、医師や看護師の頻回なチェックが必要であり、たとえ90日を超えて入院していても、紹介する先の療養病床の治療機能が十分でないので紹介できない。そのために急性期で治療を継続している。

武久会長:神野委員の今の発言は、神野委員が治療できて武久はできないと言われているに等しい。障害を受けて1週間後の人工呼吸器の状態は、7:1であっても、半年後も7:1に入院している必要はない。自院では、210人の入院患者のうち25人が人工呼吸器を装着している。肺炎などの急性期疾患も医療区分として、療養病床で診ている。肺炎などの感染症も急性期疾患の一つではないのか。慢性期医療は何もしないと思われているのか。看護必要度を自院で調査したところでは、一般病床より療養病床の方が看護必要度は高いという結果がでた。そのように重症患者をみていても、医療区分2・3が8割以上入院している療養病床20:1では、きちんと在宅復帰までつなげている。

筒井委員:7:1をどうするのかを考えていくならば、特定除外の患者の状態も7:1の中に含めて議論すれば美しい話しになる。
 
【特定除外をどうしていくのか】
高智委員:7:1、10:1にも特定除外の患者が入院していることが調査結果から明らかとなり、13:1、15:1と同様に改定が必要である。

石川委員:特定除外の患者をなんとか退院させたいと努力しても、退院先がないという現実がある。1か月当たりの入院料が、医療療養に比べ、特定除外の患者が格段に高いとしても病態が異なるのであるから比較できない。特定除外の患者がどういう状況であるのか、データを集めるべきではないか。

医療課:特定除外は、こういった調査を行えば把握できるが、レセプトを追っていこうとしても、項番の書かれていないものが多く、特定除外の実情をつかむのは難しい。

嶋森委員:調査結果を見れば、7:1、10:1の特定除外患者は3.7%、6.5%と少ない割合であるので、入院している患者をすべて一つの括りとして考えるべきではないか、

武久会長:特定除外の%は低く、平均在院日数に含めてもそれほど日数が増えるということではないのであるから、特定除外を含めて病棟全体として7:1を考えるべきではないか。

神野委員:誰が特定除外患者を診ていくのか。

石川委員:地域での連携がとれていなければ、患者の転院も上手く進まない。

武久会長:地域性の問題として、東京都では急性期の病院が中心部に集中し、Post Acuteの病院が少ないことから、患者の抱え込み、選別が行われているのではないか。急性期病院がそれによって収益を上げているということがあってはならない。いろいろな地域性の事情はあっても、だからと言って、特定除外規定を容認していくべきではない、変えるべき時期にきている。医療療養の診療報酬は低く抑えられているが、重症の患者さんを見るために加配を行っている。米国で言うLTAC(長期急性期)のようなPost Acuteを評価する仕組みができれば、慢性期医療として患者を受ける体制を今以上に整え、機能もさらに向上してくると思う。

 以上のような議論が交わされ、厚労省医療課長から、医療スタッフの人材などが限られている中で、これからの医療資源の分配はどうしていくのか、医療だけではなく介護もあわせて必要とする人が急増する将来に向け、現状をどう変えていけばよいのか等を本分科会でお考えいただきたい、と議論の方向性を示されました。
 次回の分科会では、看護必要度等の観点から議論が行われる予定です。
 
 



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