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循環型の慢性期医療を目指して

Posted By 日本慢性期医療協会 On 2011年8月1日 @ 12:40 AM In 役員メッセージ | No Comments

 ■ 今後の医療・介護の流れは多方向。利用者の目線で連携していくことが重要

 日本慢性期医療協会副会長、永生病院理事長・安藤高朗(JMC77号「シンポジウム印象記」より)

 政府の社会保障改革案でも示されている通り、高度急性期、一般急性期、回復期リハ、そして、慢性期医療としての医療療養、介護療養、介護療養型老人保健施設、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、有料老人ホームやサービス付高齢者住宅(高専貸)、在宅の流れがある。

 在宅、介護施設、高齢者住宅等の医療・介護を支えていくのが診療所、在宅療養支援診療所(病院)や訪問系サービス等多くの形態が示されている。

 重要なのは施設サービスが多様化する中で、施設が利用者の目線で連携していくことだと考えている。さらには、今後の医療・介護の流れは一方向だけでなく、多方向に循環する必要があると考えている。

 このシンポジウムではオープンマインドなチーム医療のもとで、良質な医療・介護の循環をつくっていくためにはどうすべきかを、各方面のシンポジストの方々にご議論いただいた。

■ 講 演
 
1.「国民が支持する慢性期医療を目指して」 梅村聡氏(参議院議員・医師)

 梅村氏は参議院議員に当選する前、大学病院、急性期を担う公的病院で働く勤務医であった。勤務医時代、地域連携の委員になり、地域の医療や介護関係者を集めて「大宴会」を開催し、お互いの業務内容や人柄をオープンにすることで連携が大いに進んだという経験を述べられ、「顔見知りになる、一緒に酒が飲める、連携ができる」というステップが今の医療界にもう少し必要であると考えられている。

 31年前の御祖父を亡くした時と、今年6月御祖母が亡くなられた時のエピソードを紹介、医療環境の違いを実感されたと述べられた。御祖父が末期のがんと自身が知った際、すべての治療を拒否し、自宅に戻ることを希望したという。31年前は、病診連携も在宅医療もなく、在宅での療養を医師からも看護師からも止められたという。それでも御祖父は家に帰りたいといい、自宅で亡くなられた。

 対照的に御祖母はいろいろな施設に入所し、最終的には24時間管理してもらえるICUで亡くなられた。最後の1週間、梅村議員は何回かお見舞いに行き、会話もできたそうだ。平成の現在、病院で亡くなることは理にかなっているとも思われたそうである。

 現在、診療報酬で連携パス等(脳卒中パス、大腿骨骨折など)の評価がなされるようになり、医療従事者の間では、「連携」「循環」の重要性は徐々に認識されてきたが、医療従事者のメンタリティが変わらなければ、本当の意味での「連携」は実現しないとも述べられている。在宅や連携を本当に考えているのか疑問な地域の拠点病院も存在する。

 さらに次の課題は国民の理解とも述べられた。国民に循環型の慢性期医療にどういった
利点があるのかを十分にアピールし、支持を得なければならない。その「支持」こそが政策推進の大きな原動力になると述べている。最後に、医療・介護は日本人の文化も考慮に入れた制度を構築する必要があると指摘された。

2.「三次救急と慢性期医療の連携-200例を超える連携から見えてきたもの-」  井川誠一郎氏(大阪府・平成記念病院常務理事)

 井川氏は、平成20年12月から日本慢性期医療協会急性期連携委員会により開始された三次救急と慢性期医療施設との連携モデル事業(大阪緊急連携ネットワーク)について、現在の状況を報告、転帰について検討を加え今後の連携のあり方について考察した。

 大阪地区において、コーディネーター制を導入した三次救急と慢性期病院との連携システムは一定の評価を得て、昨年末より大学病院の加入も見られるようになった。月10例前後の紹介をコンスタントに受け、2年半で251例のコーディネートを行い、その約60%の症例が慢性期医療施設に転院し、三次救急の患者数増加に貢献した。        コーディネート率も大きな変化なく経過しており、90%近い水準を維持している。転院後の入院患者の成績は満足すべきもので、これにより、三次救急からのより重症な患者の紹介が多くなった。紹介患者の病態は4人に1人が人工呼吸器患者、約半数の患者が気管切開を有し、酸素投与がされている状況が続いている。長期入院ののちに退院可能となった症例も増加しつつあるが、慢性期医療施設から介護療養への循環が十分でないと述べている。

 三次救急施設の出口問題を解決すべく開始された本ネットワークであるが、慢性期医療施設の出口問題も明らかになってきており、気管切開患者や酸素投与や胃ろうを有する患者の介護施設への入所は極めて困難な状態で、連携開始後2年半経過した現在では、慢性期医療施設における長期入院患者が増加しつつある。急性期医療と慢性期医療との連携をスムーズにするためには、慢性期医療施設と介護施設や在宅療養支援施設との連携も不可欠である。つまり、「良質な慢性期医療」を行うためには、急性期医療、慢性期医療、介護療養、在宅療養を含めた相互連携が一層重要となってくると指摘された。

3.「循環型の慢性期医療とシームレスケアサービスを考える~札幌市と西区在宅ケア連絡会の脳卒中患者追跡調査から」 
 
 奥田龍人氏(北海道・医療法人社団渓仁会ソーシャルワーク支援部)

 渓仁会グループは、急性期病院から療養病床、特養、老健施設等幅広く保健・医療・福祉を提供しており、保健・医療・福祉複合体として事業を構成している。しかしながら、患者さんの循環を見てみると、グループ内の循環というよりむしろ、地域に根差した循環が実態としては多いと奥田氏は述べている。
 札幌市医療政策課と札幌市西区在宅ケア連絡会は、「ぐるぐる図」というツールで患者さんが保健・医療・福祉の間を切れ目なく移動できているか、患者の流れや課題を把握するため、脳卒中患者の追跡調査を実施した。

 10か月間の追跡調査が可能であった65名の循環を、患者が移った回数をもとに「ぐるぐる図」に落とし込んだ結果を次に示すと、「ぐるぐる1回目」は65名中30名が在宅療養へ、2名が慢性期医療へ、3名が介護保険施設へ、残りの30名は回復期リハへ移動した。「ぐるぐる2回目」は、回復期リハの30名のうち20名は在宅療養へ移動した。また、在宅療養から3名、回復期リハから1名、慢性期医療から1名、計5名が急性期へ移動した。「ぐるぐる3回目」となると動きが少なくなり、在宅療養から老健施設へ1名、回復期リハへ1名、急性期医療へ1名移動した。

 調査終了時「ぐるぐる終了時(6回目)」には、在宅療養47名、急性期医療1名、回復期リハ1名、慢性期医療5名、介護施設(老健施設5名、特養0名)5名、死亡6名という結果となり、多くの脳卒中の患者さんは、在宅に戻れることがこの調査から明確になったと述べられた。しかしながら、在宅療養の47名中20名が「何もしていない」と回答しており、より詳細な調査が必要なものの、介護保険の利用の少なさを指摘されていた。また、10か月間の調査で平均滞在日数を見ると、慢性期医療(平均在院日数281日)、老健施設(同239日)は一旦入院すると入院が継続する傾向にあることがわかった。

 循環型の慢性期医療を考えていく上で、慢性期医療から在宅療養への流れをどうつくっていくかが、今後の課題であると述べられた。

4.「循環型の慢性期医療:在宅医療の位置と役割」 矢崎一雄氏(北海道・静明館診療所院長)

 矢崎氏が院長の静明館診療所は2001年7月開院以来10年間で788名の在宅患者を受け持ち、現在の定期訪問診療の担当の患者は218名、10年間累計の在宅看取りは131名という。在宅療養支援診療所となってからの年間看取り数は毎年15名前後で、昨年初めて20名を超えた。

 受け持ち患者は認知症を中心とした高齢者疾患(半数は認知症、脳血管障害、整形外科疾患)が70%弱、75歳未満の脳血管障害と神経難病が主体の神経疾患が15%、末期悪性腫瘍14%の構成となっている。全国の在宅療養支援診療所調査(2011年3月毎日新聞調べ)によると、在宅医療機関の典型と思われる。

 在宅療養の転帰として、10年間のデータでは、①在宅療養継続27%、②在宅で死亡17%と全体の約4割が順調に在宅療養を受けられたと評価している。また、③入院して死亡23%、④入院・入所18%、⑤転医・転居 11%、⑥外来通院3%、⑦その他の中止 1%という結果であった。

 また、なぜ在宅療養が継続できなかったのかについても、矢崎氏はデータを分析しており、3つのポイントに整理されている。①「患者本来の疾患が重症化(重症化)」、②「新たな急性期疾患の発生(急性増悪)」、③「介護する側に理由がある場合(限界)」に分類され、特に③が重要で、本人の病状にはまったく変化がないものの介護する側が病気になった等、介護する側の都合で在宅療養が継続できないことがあり、全体の約3割がこれに当たると述べている。

 今後、在宅療養が増えることが予想され、③「介護する側に理由がある場合(限界)」という理由で在宅が継続できない場合の受け皿をどう確保していくかが、今後の重要な課題と認識しなければならないと指摘された。

■ 討 論
 
 主な検討内容を記載する。
 
 ① 連携をよりスムーズにするため、国としての電子カルテの標準化を推進し、経済的な負担を軽減してほしいと会場より要望があった。梅村氏は、内閣府の中でも医療イノベーションを検討しているチームがある、

 課題として認識しているので、しっかりと検討していきたいと答えた。また、都道府県単位、医師会単位で、どの医療部門でどのような患者の受け入れが可能なのか等の医療情報の共有の必要性も述べられた。

 ② 東京都の急慢連携(2011年2~5月:57件)の典型的な患者像は「75歳以上、男、生活保護、医療区分1、介護保険未申請」である。慢性期医療がこのような患者さんの受け皿になるのではと考えているが、大阪の状況を教えていただきたいとの質問があった。

 三次救急からの連携を行い、比較的早期の段階で受け入れると医療区分も高いので受け入れ先があり、早く移ることができる。これが1年くらいたってしまうと医療区分1となり、どこにも移れないケースがある。生活保護の方は存在するが、それが原因で転院できないという経験はないと井川氏は答えた。

 また、井川先生のお話で約25%が受け入れられなかったケースがあったということだが、どのような病状なのかを教えていただきたいとの質問があり、井川氏はお断りしている症例は最初のころよりも減っていると付け加えた上で、専門的疾患の場合や社会的入院(たとえば、火事で家が焼けてしまい、帰る家がない方など)がそれにあたると答えた。 

 ③ 「ぐるぐる図」の中で今後どの流れを大きくしなければならないのかを教えてほしいという質問があった。奥田氏は、今回の調査では、「慢性期医療→老健施設→在宅」という流れの患者がいなかったことに触れ、在宅に返す仕組みが重要であると答えた。
 
 ④ 矢崎氏は、在宅に帰ることができる患者の絶対条件は、「家庭の介護力」であるという。現在の在宅療養は、どうしても家に帰りたいという本人の強い希望と在宅で療養したいという家族の熱意に支えられていると述べた。ただし、今の状況では済まない時代が来て、在宅医療のあり方を見直さなければならない場面も考えられるだろうと危惧された。
 
 ⑤ 梅村氏は、2025年に団塊の世代が後期高齢者になることを考えると、現在、政府が示しているような慢性期医療について、もう少し拡充する必要があると述べた。また、今後3人に1人は結婚しない時代がやってくることを考慮に入れ、さらに、どのような形で慢性期医療がこれからの日本を支えていくのかといった視点でもう一度シミュレーションする必要があり、国政の場で議論していくと述べた。

■ まとめ

 循環型の慢性期医療を目指すためには、このシンポジウムで議論いただいたシステム面、正確なデータを整備することに加え、さらには、急性期の下流を担う病床・施設それぞれがスキルアップしていくこと、国民にわかりやすい情報をきちんと伝えていくことも重要であると考えている。



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