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社会保障審議会・医療保険部会(1月9日)のご報告

Posted By 日本慢性期医療協会 On 2013年1月10日 @ 1:28 PM In 審議会 | No Comments

 厚生労働省は1月9日、社会保障審議会の医療保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)を開き、当協会からは武久洋三会長が委員として出席しました。同部会で厚労省は、協会けんぽの財政対策や70~74歳の患者負担の取扱いなどに関する「議論の整理(案)」を示し、大筋で了承されました。高齢者医療制度の見直しについては、「引き続き検討する必要があることから、社会保障制度改革国民会議の議論等を踏まえ、当部会においても議論を進めていくべき」としています。

 「議論の整理(案)」は、(1)協会けんぽの財政対策、(2)高齢者医療制度における支援金の負担の在り方等、(3)70歳から74歳の患者負担の取扱い、(4)高額療養費制度の改善、(5)その他(健康保険と労災保険の適用関係の整理、傷病手当金等の不正受給対策、健保組合における準備金の見直し)──で構成され、昨年2月に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」を受けて7月30日以降、5回にわたり議論した主な課題について、現時点での検討状況をまとめたものです(資料は厚労省ホームページ)。 

 整理案では、各課題の多くが両論併記となっています。70~74歳の患者負担の取扱いについては「早急に法律上の2割負担に戻すべきとの意見が多かった」、協会けんぽへの財政支援策の延長については「現行の措置(国庫補助率16.4%、支援金の1/3について総報酬割)を延長することはやむを得ないとの意見が多かった」、協会けんぽが要望している支援策の拡充については「国庫補助率を法定上限の20%に引き上げる措置を構ずべきとの意見があった」など、全体的に「意見があった」「意見が多かった」という取りまとめになっています。

 整理案の中で、「異論がなかった」としているのは、仕事中のけがなどの場合に生じる労災保険と健康保険の「谷間」の問題などで、この救済方法については「労災保険が健康保険に優先して給付されるべき」としました。
 また、労働者性のない役員の業務に起因する場合の健康保険の給付対象についても、「現行の取扱いを継続することについて異論がなかった」としています。そのほか、傷病手当金等の不正受給対策として協会けんぽに事業主への調査権限を付与することや、健保組合の準備金の見直しについても「異論がなかった」としました。

 この日の会合は2時間を予定していましたが特に大きな議論はなく、開始から40分で閉会しました。
 

■ 70~74歳の患者負担の取扱いで2カ所修正
 

 意見交換では、70~74歳の患者負担の取扱いについて、日本医師会常任理事の鈴木邦彦氏が「1割維持」を改めて主張したのに対し、健康保険組合連合会専務理事の白川修二氏が「法定の2割に戻すべき」との考えを改めて示し、「1割が2割に増えるのではなく、69歳まで3割だった人が70歳になったら2割に減るという考えが正しい」と指摘し、負担軽減が伝わるような表現への修正を求めました。
 NPO法人・高齢社会をよくする女性の会理事長の樋口恵子氏は、後期高齢者医療制度の導入の際に誤解が生じたことなどに触れながら、「69歳の人は70歳から1割軽減されるということを周知徹底すべき」と求めました。
こうした意見を受け、「平成25年度以降新たに70歳以上となる者から2割負担となる」としていた表現を、「平成25年度以降新たに70歳以上となる者から3割負担が2割負担となる」と修正しました。

 また、70~74歳の患者負担の取扱いに関連して、「年齢ごとの負担割合の水準に関する議論」と「高齢者医療制度の在り方の議論」との関係について、日本歯科医師会常務理事の堀憲郎氏が、両者を「一緒に議論すべき」と主張しました。他の委員から反対意見はありませんでした。
そのため、原案では「年齢ごとの負担割合の水準に関する議論の前に、まずは高齢者医療制度の在り方を議論すべきとの意見があった」としていましたが、堀氏の指摘を踏まえ、「年齢ごとの負担割合の水準については、高齢者医療制度の在り方の中で議論すべきとの意見があった」と修正しました。

 このほか、協会けんぽの財政対策について、全国健康保険協会(協会けんぽ)理事長の小林剛氏が一部表記の修正を要望しましたが、原案のまま取りまとめられました。小林氏は、協会けんぽの財政基盤の強化や安定化のために「具体的な方策を講じなければならないという意見が多かった」との記載について、「異論があったのか」と指摘。「協会けんぽの財政基盤の強化や安定化は大前提であり、(現行16.4%の)国庫補助率を20%に引き上げる措置は多くの委員の賛同を得られている」などと述べ、「意見が多かった」という表現を修正するよう求めましたが、健保組合連合会の白川氏が反対しました。
 白川氏は、協会けんぽの財政安定化のための「具体的な方策」の内容がいまだ不透明であることを指摘した上で、「協会けんぽの財政安定化のために健保組合が一部肩代わりすることには反対であるから、それを含めて『意見が一致した』と書かれるのは納得できない」と主張しました。意見が分かれたため、「座長一任」で決着、修正は入りませんでした。

 このほか、70~74歳の患者負担の取扱いに関連して、樋口氏が「低所得者対策への対策について、何らかの具体策を示してほしい」と求めましたが、原案のまま「低所得者等に配慮を行うべきとの意見が多かった」との記載にとどまりました。
 また、健保組合における準備金の見直しについて、白川氏が「医療給付費相当分3か月分はまだ小さくできる」と主張し、積み立てておかなければならない準備金の額をさらに減らすよう改めて要望しましたが、修正はありませんでした。

 「議論の整理」の対象となった昨年7月30日以降の同部会では、産科医療補償制度の運営状況や医療費適正化計画なども議論しましたが、今回の取りまとめには盛り込まれていません。このため、同部会の最後に白川氏は、「保険者財政が厳しい折、毎年200億円の剰余金が積み上がっていくのは納得いかない状況」と不満を表し、今後の検討スケジュールなどを次回の同部会で示すよう厚労省側に求めました。医療費適正化計画については、経団連社会保障委員会医療改革部会長の齊藤正憲氏が、「給付の適正化に向けた具体的な検討を進めるべき」と求めました。
 
1月9日の医療保険部会
 
 



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