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社会保障審議会・医療保険部会(11月7日)のご報告

Posted By 日本慢性期医療協会 On 2012年11月8日 @ 3:21 PM In 会長メッセージ,審議会 | No Comments

 厚生労働省は11月7日、社会保障審議会の医療保険部会を開催し、全国健康保険協会(協会けんぽ)への財政支援策をめぐる議論をスタートしました。協会けんぽは、①国庫補助割合の引き上げ(現行16.4%から20%へ)、②高齢者医療制度の見直し──を主に要望しましたが、①は合意に至らず、当面は今年度末に期限が切れる支援策について集中的に審議する方針で一致。②については賛成意見が相次ぎましたが、日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、「医療問題はすなわち高齢者問題。高齢者医療がどんどん増えるから高齢者医療費を減らすという単純な策ではなく、システム上の問題を議論すべきではないか」と指摘しました。

 厚労省によると、協会けんぽはリーマンショック後の景気悪化による保険料収入の激減などで2009年度に4,900億円の収支赤字を計上。積立金を取り崩しても3,200億円の負債が生じたため、翌10年に健康保険法を改正して財政再建の措置を講じました。
 具体的には、10年7月から12年度までの間、国庫補助率を13%から16.4%に引き上げたほか、後期高齢者支援金の3分の1に総報酬割を導入するなどの財政支援を行いました。その結果、11年度末には積立金等残高が1,951億円と改善しました。こうした状況などを踏まえ、協会けんぽへの財政支援策を来年度以降も継続するか、さらに拡充するかなどが主な焦点となっています(資料は厚労省ホームページ)。

 この日の部会で、協会けんぽ理事長の小林剛委員が来年度以降の収支見通しを示し、依然として厳しい財政状況にあることを報告しました。小林委員によると、協会けんぽの加入者数は国民3.6人のうち1人に当たる3,480万人で中小企業が多く、従業員9人以下の事業所が4分の3以上を占めます。
 小林委員は、「収入の低い中小企業の皆さんが突出して高い社会保険料を負担することは社会保障とはとうてい思えない。大企業との格差が拡大している」として財政支援策の拡充を求めるとともに、「抜本的な改革をしなければ国民皆保険制度が守れなくなってしまう」と訴えました。
 

■ 抜本的な改革は「国民会議」で
 

 厚労省保険局の大島一博・保険課長は、協会けんぽと健保組合が共に保険料率を年々引き上げている状況を示した上で、「協会けんぽの引き上げ率のほうが大きく、健保組合よりも相対的に厳しい状況にある」と指摘しました。保険料の基礎となる報酬水準の格差が拡大していることを示し、「何らの措置も講じなければ協会けんぽの保険料率は2013年に0.4%上がって10.4%になる。これは極めて大変なことなので、一定期間、何らかの措置の継続あるいは実施が必要であると考えられる」と述べました。
 
協会けんぽと健保組合の報酬水準の推移(厚労省提出資料)

 その一方で大島課長は、来年8月までに「社会保障制度改革国民会議」を設置する方針が社会保障・税一体改革で定められていることを指摘し、「国民会議の中で高齢者医療制度をはじめ医療保険制度の大きな改革が議論されることが予想されるので、今の段階では当部会で抜本的な医療保険制度の改革を議論する状況にはない。当面の協会けんぽの財政支援をどうするかについての議論をお願いしたい」と意見を求めました。[→続きはこちら]
 

 

 

■ 「高齢者医療制度の抜本改革」を求める声も
 

 意見交換の冒頭、健康保険組合連合会専務理事の白川修二委員は、「健保組合は負担が増えて困っている。協会けんぽは、積立金を取り崩して保険料の引き上げを抑えるべきだ」などと主張しました。その一方で、「小林委員と同じく、高齢者医療制度の抜本改革がない限り、保険者財政は中長期的にはもたない。そこに手を付けないと、来年度以降の問題は短期的な、付け焼き刃的な対策しか打てない」と述べました。
 経団連社会保障委員会医療改革部会長の齊藤正憲委員も、「財源捻出を目的に健保組合に負担を肩代わりさせることには反対」とした上で、「今求められているのは高齢者医療制度改革を推進して、現役世代の負担軽減を図ることだ」と述べました。

 委員らの意見を受け遠藤久夫部会長(学習院大経済学部教授)は、「抜本改革なく小手先では意味がないとの意見はまさにその通りだが、国民会議で抜本改革に近いことが議論されると聞いている。一方、今年度末に支援策の期限が切れるので、当面、この部会としては期限が切れる時限措置について集中的に審議していくのが適切な対応ではないか」とまとめました。
 大島課長も、「年内に期限が切れる措置について集中的に議論し、結論を出していただきたい。抜本的な議論は国民会議で始まるが、当部会でも並行して議論をお願いしたい」と応じました。
 

■ 医療問題はすなわち高齢者問題
 

 協会けんぽへの財政支援策をめぐる議論の中で、武久委員は「皆さんの言葉の端々に、高齢者医療の問題が出てくる」と指摘した上で、次のように述べました。

 「大学病院の入院患者さんの平均年齢が70歳を超えているというデータもある。すなわち、医療問題はすなわち高齢者問題とほぼ同義語ではないか。高齢者が高度急性期病院に入院している。処置が終わった後も入院している。この1日当たりの入院医療費が非常に高い。処置が終わったら次の段階に移っていくという仕組みを考えていかないと、根本的な解決にはならない。『高齢者医療がどんどん増えるから高齢者医療費を減らすんだ』という単純な策ではなく、システム上の問題を議論すべきではないか。治療が終わっても長く入院している人をできるだけ少なくするような議論も必要ではないか」
 
武久洋三委員(写真中央、日本慢性期医療協会会長)
 



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