機動的な介護報酬の見直しを ── 田中常任理事、介護給付費分科会で

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20260828_介護給付費分科会

 介護人材確保に向けた処遇改善等をテーマにした厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の田中志子常任理事は「最低賃金の引上げに連動した機動的な介護報酬の見直し、または改定までのつなぎとなる財政支援を、恒常的な仕組みとしてご検討いただきたい」などの見解を示した。

 厚労省は8月28日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=岩村正彦・東京大学名誉教授)の第263回会合を開催し、令和9年度介護報酬改定に向けて5項目のテーマを挙げた。
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01スライド_資料一覧

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 介護人材確保に向けた論点(資料1)として、厚労省は「他職種と遜色のない処遇改善に係る取組」「離職防止に向けた取組」などを挙げた。そのほか、介護現場の生産性向上等の推進(資料2)、高齢者虐待の防止等(資料3)、災害対応(資料4)、ハラスメント対策(資料5)──などについても論点が示されている。

 田中常任理事はこのうち資料1・2・3・5について意見を提出した。田中常任理事の意見は以下のとおり。

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1.最低賃金・物価上昇と介護報酬の時間差 (資料1・2)

 今回の最低賃金の大幅な引上げは、介護事業所にとって直ちに職員の賃金へ反映すべきものである一方、介護報酬には即時に反映されません。とりわけ経営体力の乏しい小規模事業所では、報酬改定や支援措置が実施されるまでの運転資金を確保できるか、深刻な懸念があります。

 最低賃金と物価が介護報酬の見直しを上回る速度で上昇する中、公定価格の下で運営する現場の自助努力は、既に限界に達しつつあります。最低賃金の引上げに連動した機動的な介護報酬の見直し、または改定までのつなぎとなる財政支援を、恒常的な仕組みとしてご検討いただきたいと考えます。

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2.在宅介護におけるテクノロジー活用の前提整備 (資料2)

 在宅介護におけるテクノロジーの活用は、機器やシステムの導入支援だけでは進みません。特に山間地では、通信環境の不安定さや地域差そのものが大きな障壁となっています。厚生労働省のみで完結する課題ではないため、総務省等の関係省庁と連携し、山間地を含む通信インフラの整備を先行して進めていただきたいと考えます。

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3.虐待防止と「開かれた施設」の推進 (資料3)

 感染症流行期以降も、面会時間、人数、マスク着用等について厳しい制限を続けている事業所が少なくないと聞いています。当グループでは、これらを一律に制限しておらず、利用者・家族から大変喜ばれています。

 家族や外部の人の目が日常的に入ることは、虐待の抑止に加え、施設運営の透明性、職員のモチベーション、ケアの質の維持にもつながります。感染症の発生など合理的な例外は認めつつ、面会機会の確保を運営上の責務として明確化し、合理的な理由のない一律の面会制限を見直す仕組みをご検討いただきたいと考えます。

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4.身体拘束と「事故報告」の制度・名称の在り方(資料3)

 高齢者に生じやすい転倒を、すべて一律に「事故」として同じ枠組みで報告する現行の考え方は、見直す必要があると考えます。高齢者は、ふらつきがあっても自ら立ち上がり、歩き、生活したいと望みます。その尊厳と自己決定を守ろうとすれば、転倒の可能性を完全にゼロにすることはできません。

 しかし、転倒が発生すれば事故報告を求められるため、事故を避ける手段として身体拘束が選択されやすくなる構図があります。「身体拘束は行ってはならない」と求める一方で、「転倒事故もゼロにしなければならない」と求めることは、現場に相反する責任を負わせ、過大な負荷を生じさせています。

 他者からの加害、介助上の明らかな不備、設備上の問題など、外的要因や予防可能性が明確な事故と、加齢・疾病の特性や本人の自発的な活動に伴い、十分な予防策を講じても一定の確率で生じる転倒・誤嚥等は区分し、報告・評価の方法を分けるべきです。

 また、「事故報告」という名称自体も見直す必要があると考えます。「事故」という言葉は、自然発生的な事象まで過失によるもの、あるいは防ぐことができたものとして受け止めさせ、現場を萎縮させるおそれがあります。例えば「安全・リスク事象報告」など、原因や予防可能性を中立的に整理・検証できる名称への変更も、ご検討いただきたいと考えます。

 もちろん、転倒・誤嚥の予防、重篤化防止、発生後の検証は必要です。その上で、本人の尊厳を守り、身体拘束をしないケアを現場が選びやすくするため、事故報告制度とリスク評価の枠組みを整理していただきたいと考えます。

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5.カスタマーハラスメント対策の行政による周知 (資料5)

 カスタマーハラスメントという考え方は、介護業界ではなお十分に浸透していません。事業所が利用者・家族に直接説明すると、「責任逃れをしようとしている」と受け取られるのではないかと懸念する声があります。

 これは個々の事業所が独自に設けるルールではなく、法整備に基づき、職員の安全と継続的なサービス提供を守るための制度です。各事業所に周知を委ねるだけでなく、行政から利用者・家族および国民に対し、制度の趣旨と適正な苦情・要望との違いを、統一的かつ分かりやすく発信していただきたいと考えます。

 行政名義の共通リーフレット、ポスター、説明文書等を整備することで、事業所と利用者・家族との不要な対立を防ぎ、制度への正しい理解を促進できると考えます。

 以上、現場に新たな義務や対応を求める際には、介護報酬、財政支援、通信基盤、事故報告・リスク評価、国民への周知までを一体的に整備し、現場の自助努力だけに委ねない制度設計をお願い申し上げます。以上

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