高齢入院患者は重症化し、亡くなる例も ── 池端副議長、日病協会見で訴え
15団体で構成する日本病院団体協議会(日病協)は7月24日、第259回代表者会議後に記者会見を開いた。高額な新型コロナウイルス感染症治療薬を包括払いの対象外とするよう求める緊急要望について、池端幸彦副議長(日本慢性期医療協会副会長)は、多疾患が併存する高齢の入院患者では感染後に重症化し、亡くなる例が現在も見られると説明。「今まで通りでやってしまうと、もう経営的に破綻してしまう」と述べ、早期の制度見直しを求めた。
神野正博議長(全日本病院協会会長、恵寿総合病院理事長)は、同日の代表者会議で協議した内容として、①医療材料の逆ザヤ問題、②新型コロナ治療薬、③地域医療構想策定ガイドライン、④経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太方針)──の4点を報告した。
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「普通の風邪」と同じではない
新型コロナ治療薬をめぐっては、入院中の患者に投与した高額な治療薬を包括評価の対象外とする特例的な取扱いが5月31日で終了した。神野議長は「院内でクラスターが発生した場合、患者の命を守るため、1人当たり数万円から10万円程度の抗ウイルス薬を多数の患者に投与せざるを得ない」と指摘。包括払いの病棟では、その費用を医療機関が負担することになるとして、「治療薬を出来高で算定できるよう求める緊急要望書を取りまとめた」と説明した。
池端副議長は「コロナ感染症は、もう普通の風邪と同じではないかという意識を持たれる方もいると思うが、多疾患が併存する高齢の入院患者は免疫力も落ちている。感染症を起こすと重症化し、亡くなる例もまだまだ見られる」と述べた。
さらに、「入院患者は外来患者とは異なり、複数の疾患に対する治療を受けていることが多く、感染者のゾーニングやクラスターへの対応も必要になる」と説明。「治療する手段もなかなか厳しい。これを今まで通りでやってしまうと、もう経営的に破綻してしまう。この危険がすごくあるということが共有できた」と代表者会議での議論を紹介した。
要望の対象は、地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、療養病棟入院料、障害者施設等入院基本料など、包括的な入院医療を提供する病棟。要望事項は「包括払い病棟における高額な新型コロナウイルス治療薬の出来高算定(包括範囲外)への見直し」とした。DPC病棟については、薬剤費が後の診療報酬に反映される仕組みであることから、今回は対象外。要望書は翌週、厚生労働大臣宛てに提出する方針。
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逆ザヤ対応、「診療報酬とは別の財布で」
医療材料の償還価格をめぐって神野議長は、中医協の保険医療材料専門部会に示された資料で、市場実勢価格の加重平均値が保険償還価格を上回る機能区分の割合が、令和7年に35%となっていることを報告した。
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神野議長は「3品に1つが逆ザヤであるという、非常に由々しき問題だ」と懸念。円安や物価上昇などにより、医療機関の購入価格が保険償還価格を上回る状況が広がっているとの認識を示した。
一方、償還価格を引き上げても、診療報酬全体の財源が一定であれば、医師や医療従事者の技術を評価する技術料が圧迫される可能性がある。神野議長は、再生医療等製品や新たな医療材料には、1人当たり5000万円を超えるものも登場していることに言及。「日本の成長に関わるもの、先進医療に関わるものについては、診療報酬の枠とは別の財布というか、国家戦略として別途規定することが必要ではないか」と述べた。
日病協としても、先進医療や医療技術の発展に必要な費用について、通常の診療報酬とは異なる財源で支える仕組みを国に働きかけていく方針で一致したという。
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大学病院の役割、都道府県との協議を重視
7月3日に示された「地域医療構想策定ガイドライン」について代表者会議では、大学病院の役割を中心に議論があった。ガイドラインでは、急性期拠点機能を担う医療機関をめぐって病院間の協議が調わない場合、都道府県や、医師の人的協力を行う大学病院本院を交えて協議することが示されている。
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また、大学病院本院には、急性期拠点機能を担う医療機関への外科医、麻酔科医等の派遣、高齢者救急・地域急性期機能を担う医療機関への内科系医師等の協力、へき地や人口の少ない地域における代診医の確保などについて、都道府県と調整する役割が盛り込まれた。
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神野議長は、大学病院が地域の拠点病院を事実上決定し、そこに医師を優先的に派遣する一方、ほかの病院から医師を引き揚げることにつながるのではないかとの懸念が代表者会議で示されたと説明した。
特に、大学病院が1施設しかない地方では、その大学病院の意向によって地域の医療提供体制が左右される可能性がある。このため、大学病院だけで判断するのではなく、都道府県を交えた協議を経て、地域全体として医師派遣や医療機能の分担を決める必要があるとの認識で一致。大学病院側の出席者からは、従来は医局や教授ごとに決めることも多かった医師派遣について、今後は大学全体として判断することが求められるとの意見もあったという。
一方、ガイドラインは拠点病院や高齢者救急、大学病院の役割について具体的に記載しているものの、診療所を含む日常生活圏の医療をどのように維持するかについては、記述が十分ではないとの意見も相次いだ。神野議長は「日常生活圏の医療をどうするかについては、今後、議論を進めなければいけない」と述べた。
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骨太方針、社会保障費の「キャップ制」を警戒
7月21日に閣議決定された骨太方針について、日病協は、現役世代の保険料負担や社会保障負担率に関する記載に警戒感を示した。
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骨太方針には、医療・介護を中心とする社会保障制度改革を進め、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げを目指すことが盛り込まれた。また、2027年度の社会保障負担率が2025年度と比べて上昇しないよう取り組むことや、2026年度中に社会保障改革の具体的な項目と工程を明確化することも示されている。
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神野議長は、代表者会議で「キャップ制ではないか」と警戒する声が多く上がったと報告。医療給付費の対GDP比や雇用者報酬の伸びとの関係を参照するとの記載についても「我々としては警戒すべき文言だ」と述べた。
一方で、神野議長は「成長戦略そのものを否定するものではない」とした上で、「社会保障や医療も成長分野として位置付ける必要がある」とした。その上で、「再生医療、新薬、新たな医療材料などについて、伸ばすものは伸ばしてほしいという強い思いがある」と強調。経済成長を進める中で社会保障制度が取り残されることがないよう、医療費の一律な伸びの抑制には慎重な対応を求めていく考えを示した。
2026年7月25日






