第259回介護給付費分科会のご報告

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20260629_介護給付費分科会

 厚生労働省は6月29日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=岩村正彦・東京大学名誉教授)の第259回会合を開催し、令和9年度介護報酬改定に向けて訪問系サービスを中心に論点を示した。 
 
 厚労省は同日の分科会に資料1~7を提示。訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーションなどのテーマごとに「現状と課題」を示した上で「論点」を挙げ、委員の意見を聴いた。
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01スライド_資料一覧

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 この日の議論では、訪問系サービスを中心に、人材不足、地域差、移動の負担、集合住宅へのサービス提供、加算の在り方などが幅広く取り上げられた。この中で、訪問介護の令和6年度決算の収支差率(9.6%)について、「収支差率だけを見て議論すべきではない」「詳細な分析をお願いしたい」などの意見が相次いだ。

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訪問介護、収支差率の見方が焦点に

 資料によると、訪問介護の収支差率は令和6年度決算で9.6%(金額ベースで31.6万円)、全サービス平均の収支差率は4.7%と示された。一方、訪問看護は10.3%(同35.8万円)、訪問リハビリテーションは10.8%(同13.8万円)となっている。
 
 質疑で、志田信也委員(認知症の人と家族の会副代表理事)は、訪問介護の収支差率9.6%や全サービス平均4.7%について「経営が安定しているかどうかの指標ではない」とする厚労省の事前回答を紹介。その上で、財政制度等審議会で介護サービスの利益率が中小企業平均より高いとして介護報酬の適正化が主張されたことに触れ、経営実態調査の数値の扱い方について見解を求めた。
 
 これに対し、厚労省老健局認知症施策・地域介護推進課の吉田慎課長は、訪問介護の経営状況は地域、事業所規模、事業形態によって異なると説明。利用者宅を一軒ずつ訪問する事業所と、集合住宅の入居者にサービスを提供する事業所では状況が異なるとして、「全国平均で収支差率が何%かというところだけで方針を考えるのではなく、状況を丁寧に見ていきたい」と述べた。
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02スライド_訪問介護の論点

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 論点では、「全国平均による多寡だけを見るのではなく、こうした訪問介護の特性を踏まえて検討を進めることが必要」とした上で、中山間・人口減少地域や高齢者住まいのサービスについて「別途の回で議論いただく」としている。

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小規模事業所等への影響を懸念

 委員からは、令和6年度改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられたことを踏まえ、小規模事業所や在宅ベースの事業所への影響を懸念する声が出た。

 小泉立志委員(全国老人福祉施設協議会副会長)は「収支差率だけを見て議論するのではなく、事業所の立地、規模、利用者像などをきめ細かく分析すべき」と主張。訪問介護は地域の在宅生活を支える基盤であり、人材不足が深刻化する中で安定的にサービスを継続できる報酬上の対応が必要だと訴えた。
 
 今井準幸委員(民間介護事業推進委員会代表委員)は「地域、立地、事業所規模等について異なるという認識のもと、詳細な分析を今後もお願いしたい」と要望した。

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中山間・離島では移動負担を問題視

 中山間地域や離島の訪問介護をめぐっては、移動時間や移動コストを報酬上どう評価するかが焦点となった。濵田和則委員(日本介護支援専門員協会副会長)は「中山間地域や離島では人材確保が困難」と指摘し、都市部とは異なる類型で評価する必要があるとの見方を示した。平山春樹委員(連合総合政策推進局生活福祉局長)も、豪雪地帯では訪問前に駐車スペースを確保するための除雪など、報酬に表れにくい「シャドーワーク」が生じていると述べ、一時的な補正予算にとどまらない制度上の対応を求めた。

 自治体側からも同様の意見が出た。伊地知芳浩参考人(鹿児島県保健福祉部長)は、中山間・人口減少地域では利用者が広範囲に点在し、サービス提供の効率性が低いと説明。移動にかかる経費や時間を適切に考慮した制度設計を求めた。奥塚正典委員(大分県中津市長)も、地方の社会福祉協議会が担う訪問介護で収支差がマイナス10%を超えている例に触れ、全国平均の収支差率ではなく地域特性を踏まえた報酬体系を要望した。

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同一建物・集合住宅型の分析も課題

 一方で、集合住宅や高齢者向け住まいと一体化した訪問系サービスについては、より精緻な分析を求める声もあった。東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は、訪問介護の事業所数が微増している背景には、廃業と新規参入が同時に進んでいる可能性があるとし、廃業・新規参入の事業所が同一建物型なのか単独の在宅型なのかを分けて示すよう求めた。
 
 鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は、同一建物や集合住宅への利用者が多い場合、そうでない場合に比べて収支差が高い事業所の割合が多い傾向があると指摘し、「訪問の手間等を踏まえた公平な評価の在り方について検討すべき」と述べた。伊藤悦郎委員(健康保険組合連合会常務理事)も、地域や事業規模などのデータを細かく精査し、適正化と重点化の観点からメリハリをつけた見直しを求めた。 

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ケアマネ不足、安全対策と業務範囲は

 居宅介護支援では、ケアマネジャーの担い手不足、処遇、業務範囲、安全対策が集中的に議論された。資料では、居宅介護支援の事業所数は平成30年度をピークに減少傾向にある一方、受給者数は増加傾向にあることが示された。ケアマネジャーの高齢化や若年層の減少を背景に、委員からは基本報酬の引き上げや処遇改善加算の拡充を求める意見が出た。
 
 また、訪問中のケアマネジャーが被害を受けた事件を受け、複数名訪問や安全確保策の必要性も指摘された。濵田委員は、他の訪問系サービスで導入されている2名派遣について、「居宅介護支援でも同意について検討する時期が来ているのではないか」と提案。小泉委員も「密室となる訪問現場では職員が暴力やハラスメントの被害に遭うリスクがある」と懸念し、「複数名訪問時の報酬上の加算創設を明確に検討すべき」と要望した。

 平山委員は、ケアマネジャーが入退院手続き、買い物、ごみ出しなど本来業務外の依頼にも無償で対応せざるを得ない実態に触れ、「困っているからケアマネが何とかする」という状況は持続可能ではないと強調。「国として業務範囲を明確化し、必要な支援体制を整備すべき」と訴えた。

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リハ職の訪問看護、「あるべき姿に誘導を」

 訪問看護では、事業所数が増加する一方、営利法人の参入拡大やリハ専門職による訪問の増加が議論になった。資料では、訪問看護ステーションの収支差率は令和6年度決算で10.3%と示されたほか、医療処置の実施件数が増加し、緊急時対応や排泄ケア、褥瘡処置などのニーズが高まっていることが説明された。
 
 田母神裕美委員(日本看護協会常任理事)は「医療ニーズの高い在宅療養者が増加する中、入院前から退院後早期までの医療機関との連携や、緊急訪問に対応できる体制の評価が必要」と強調。ICTを活用した情報連携について、「介護保険でも医療保険と同様の評価が必要」と求めた。
 
 一方、東委員や日本医師会の江澤和彦委員は、訪問看護ステーションからのリハ職による訪問割合が高まっていることに懸念を示した。江澤委員は「要支援者では約半数、要介護者でも3分の1程度がリハ職による訪問となっている」と指摘。「リハ職が看護職より多いステーションもあり、これは本来のあるべき訪問看護あるいは訪問看護ステーションではない。かなり乖離した状況だと思うので、報酬改定で、あるべき姿に誘導をかけていくべきだ」との考えを示した。

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訪問リハ、長期利用をどう評価するか

 訪問リハビリテーションでは、利用者数、事業所数とも増加傾向にあり、収支差率は令和6年度決算で10.8%と示された。資料では、利用開始から6カ月後にADLが改善した利用者は約34%、維持は約46%、IADLでは改善が約40%、維持が約42%だったことも示された。
 
 ただ、介護予防訪問リハの長期利用については、評価をめぐり意見が分かれた。伊藤委員は、利用開始24カ月後も終了予定のない利用者が約76%に上ることを踏まえ、「さらなる適正化が必要か検討すべきだ」と求めた。一方、東委員や江澤委員は「要支援状態を長く維持していること自体を評価すべきだ」と主張。利用継続があるからこそ状態維持ができている可能性もあるとして、長期利用を一律に問題視する見方に慎重な姿勢を示した。

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居宅療養管理指導、薬剤管理と栄養支援が課題

 居宅療養管理指導では、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士など、多職種が在宅療養を支える役割が取り上げられた。山田武志参考人(日本薬剤師会常務理事)は、「薬局が末期がん、心不全、認知症、中心静脈栄養、医療用麻薬の持続投与など、多様で高度な薬学的管理に対応している」と説明。「薬剤師による服薬状況や残薬、副作用、服薬環境の継続的な確認が重要だ」とし、居宅療養管理指導費の安定的な評価を求めた。
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03スライド_資料5P39

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 堀田聰子委員(慶応義塾大大学院健康マネジメント研究科教授)は、施設職員が栄養介入の必要性がないと判断した利用者の中にも、低栄養またはそのおそれがある人が多く含まれていた点に注目。管理栄養士などによる栄養スクリーニングを医師の迅速な指示につなげる仕組みや、タスクシフト・タスクシェア型の制度設計の必要性を指摘した。

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福祉用具、「物価上昇を勘案した見直しを」

 福祉用具・住宅改修では、令和6年度改定で導入された一部福祉用具の貸与・販売の選択制や、貸与価格の上限設定が議論された。資料によると、福祉用具貸与の保険給付額は令和5年度で約4,300億円、販売は177億円。選択制導入後、販売の給付が発生する一方、導入直後のピークを経て全体額はおおむね横ばいで推移している。
 
 一方で、物価高騰や人件費上昇の中で、上限価格の仕組みが事業者経営に与える影響を懸念する意見が相次いだ。濵田委員は「上限価格の見直しで減額となった商品が多い」と指摘。既存商品については見直し対象から外し、新商品のみに限定するなど事務負担の簡素化も検討すべきだと提案した。東委員も「上限価格の仕組みによる価格の減額は経営的に大変厳しい」と濵田委員の意見に賛同。「新たな上限価格の見直しについては、新商品のみに限定する等、物価上昇を勘案した見直しをすべき」と述べた。 

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AIやICTの活用支援も

 この日の議論では、訪問介護の基本報酬引き上げや加算要件の緩和を求める声が多く上がる一方、保険者側や経済界の委員からは、同一建物型、集合住宅型、サービス提供内容、地域差、事業規模などを分けた詳細なデータ分析を求める意見も出された。
 
 間利子晃一参考人(日本経済団体連合会経済政策本部主幹)は、AIやICTの活用、経営の多機能化などを通じた人材の有効活用も検討すべきだと述べた。
 
 奥塚委員は「ICTの活用による業務効率化を図るような制度設計をお願いしたい」と要望。「地方の小さな規模の事業所は導入時の初期費用、初期投資、また操作への不安等、いろいろ事情がある」と現状を伝え、「ぜひ地方にも、そのような視点での目配りをお願いしたい」と要望した。

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