これからの回復期リハのあり方 ── 定例会見で橋本会長
日本慢性期医療協会は5月21日の定例記者会見で、「これからの回復期リハのあり方 〜2026年(令和8年)改定『強化体制加算』が示す未来〜」をテーマに見解を示した。橋本康子会長は早期退院の促進を評価した上で、退院後の生活に必要な「実践的機能の回復」の必要性を強調し、在宅リハも含めた「回復期リハシステム」を提案した。
会見で橋本会長は、今改定で新設された「回復期リハビリテーション強化体制加算」について「実績指数48という高い水準が求められる中、在院日数のさらなる短縮が進む」と指摘。「早く良くなり、早く退院することが理想だが、十分に改善しないまま退院することがあってはならない」との認識を示した。その上で、「自宅に帰ることと自宅で生活できることは異なる」と述べ、退院後の生活を軌道に乗せるまでを回復期リハビリテーションの役割として捉える必要性を訴えた。
同日の会見の模様は以下のとおり。なお、会見資料は日本慢性期医療協会のホームページをご覧いただきたい。
.
.
本日の内容
[池端幸彦副会長]
ただいまから令和8年5月度の日本慢性期医療協会定例記者会見を始める。それでは早速、橋本会長からお話しいただきたい。
[橋本康子会長]
本日の内容は、今回の診療報酬改定を踏まえた「これからの回復期リハのあり方」である。今改定では「強化体制加算」が新設された。本日は、この強化体制加算が示す今後の方向性について述べたい。
まず、機能改善について。強化体制加算の要件として、実績指数48という非常に高い水準が課されている。そこで、実績指数48による早期退院と、退院後支援の重要性について説明する。
次に、リハビリテーションの促進について。排尿自立と摂食嚥下によってリハビリテーションの効果を高めることが求められている。トイレに行って排泄できること、また口から食事を摂取できることは、患者の生活機能を回復させる上で極めて重要である。今回の改定では、こうした点が評価された。
さらに、生活課題への対応について。退院前訪問指導により、患者が実際に生活する場でどのような課題を抱えるのかを把握することが重要となる。
以上の3点が強化体制加算の要件となっている。新しい加算であり、内容もやや複雑であるため、その説明を含めて述べる。
.
強化体制加算の3要件
今改定において、特に質の高い取り組みを評価する区分として、「強化体制加算」が新設された。点数は、1日につき80点である。
.
.
要件の1つ目は、先ほど述べたようにリハビリテーション実績指数が48以上であること。この点については、後ほど詳しく説明する。
2つ目は、排尿自立支援加算に係る届出を行っている保険医療機関であること。また、摂食嚥下機能回復体制加算1に係る届出を行っている保険医療機関であること。これらについては、現時点では「望ましい」とされているが、今後を見据えれば、早い段階から届出を行っておくことが重要である。
3つ目は、自宅へ退院した患者のうち、1割以上に退院前訪問指導を実施していることである。退院前訪問指導とは、患者の退院前に自宅を訪問し、実際の生活環境を確認する取り組みである。
セラピストが患者本人とともに自宅を訪問し、家族とも話し合いながら、寝室からトイレまでの距離、玄関の上がり口、キッチンや台所へ向かう動線の段差などを確認する。段差がある場合には、それを安全に越えられるかどうかを検討する。また、入浴が可能な状態であるか、手すりがどこに必要かといった点も確認する。このように、退院前訪問指導では、患者が自宅で安全に暮らすために今後どのようなリハビリテーションが必要かを見極める。
.
実績指数48の意味と水準
実績指数は、「早く良くする」ことを表す指標である。在宅復帰のカギとなる「歩行」や「トイレ動作」が加点された一方で、除外率は10%減少した。
.
.
ここでは、実績指数48の意味と水準について説明する。実績指数48とは、簡単に言えば患者を早く良くすることを評価する指標である。在宅復帰のカギとなる歩行やトイレ動作が加点対象となった点については、後ほど説明する。
まず、リハビリテーション実績指数の算出方法。すでにご存じの方もいると思うが、実績指数は、分子にFIM利得、分母に「算定上限日数」に対する「在院日数の割合」を置いて計算する。
例えば、脳卒中の患者では、回復期リハビリテーション病棟で高い点数を算定できる期間として、算定上限日数150日が設定されている。これは5カ月に相当する。この患者が150日すべて入院するのではなく125日で退院した場合、在院日数125日を算定上限日数150日で割るため、分母は0.83となる。
さらに分かりやすく言えば、脳卒中の患者で算定上限日数150日が定められている中、非常に早く改善し、75日で退院できた場合には、在院日数は上限日数の半分であるため、分母は0.5となる。この場合、実績指数48を満たすには、FIM利得が24点であっても、24を0.5で割ることで48となる。
分子となるFIM利得は、退院時のFIM点数から入院時のFIM点数を差し引いた値である。例えば、退院時のFIMが80点、入院時のFIMが40点であれば、FIM利得は40点となる。この40点を分母で割って実績指数を算出する。分母が0.5であれば、FIM利得が24点でも実績指数は48となる。
したがって、退院時にはリハビリで大きく改善しており、FIMの点数が非常に高く上がることが理想である。入院時に20点であった患者が退院時に70点以上になるような例が多ければ望ましい。しかし、すべての患者がそのように改善するわけではない。
その場合、分母を小さくする、すなわち早く退院させる方向に働く可能性がある。早く退院すればするほど実績指数は高くなるからだ。もちろん、回復期リハビリ病棟に入院した患者が早く改善して早く退院すること自体は望ましい。最も理想的なのは、「早く良くなり、早く退院する」ことである。
しかし、十分に良くなっていないにもかかわらず、早く退院させられるようなことが起こるのではないかという懸念がある。そうした事態を避けることが重要である。
一方で、仮に退院時期が早まっても、歩けるようになった、トイレに行けるようになった、自分で食事ができるようになったという状態まで回復している場合もある。ただし、患者本人としては、「もう少し、しっかり歩けるようになりたい」、「買い物に行きたい」、「車を運転したい」と考えることもある。また、「孫の送迎をしたい」、「弁当を作りたい」など日常生活上の希望もあるだろう。
そのような生活行為を実現するには、「まだ十分ではない」と感じる患者もいる。「もっと入院してリハビリを続けたい」と思う場合もあるだろう。しかし、今回のような制度設計を踏まえると、今後は早期退院がさらに進む可能性がある。その際に、どのように対応していくべきかを考える必要がある。
今回の令和8年度改定では、実績指数の計算に加えて、いわばボーナスのような仕組みも設けられた。FIMの項目のうち、「歩行または車椅子」と「トイレ動作」が対象である。これらの項目について、入院時には介助を要していた状態から、退院時にはほぼ自立した状態になると、それぞれ1点ずつ加点される。合計で最大2点の加点となる。
このことは、今回の改定において、排泄、とりわけトイレで排泄できることに大きな重点が置かれていることを示している。トイレで排泄できることは患者の生活にとって極めて重要であり、その点が点数設定にも反映されたといえる。
もう1つ、大きな変更として、除外患者の扱いがある。回復期リハビリ病棟には、入院してもFIMの点数が大きく改善しにくい患者がいる。ただし、点数として大きく表れにくくてもリハビリを実施する意義はある。例えば、「意識レベルが少し改善する」、「応答が可能になる」といった変化である。
従来は、そのような患者を一定割合、実績指数の計算から除外できる仕組みがあった。しかし今回、この除外率が10%引き下げられた。これも非常に大きな変更である。
.
■機能改善と在院日数のバランス
実績指数の導入以降、在院日数は短縮されている。今後もさらなる短縮が予想されるが、「早くても良くならない」まま退院することが懸念される。
.
.
グラフの横軸は、2011年から2026年度改定までの推移を示している。縦軸は、在院日数と退院時FIMを示した。2011年からの15年間でどのように変化してきたかを見ると、在院日数は短縮している。2011年頃には平均在院日数が90日程度であったが、徐々に減少し、現在は83日程度となっている。
一方、退院時FIMはどうかというと、おおむね平均85点程度まで上がっている。FIMは126点満点で、そのうち85点程度。退院時FIM85点というのは、何らかの介助があれば歩行できる程度の水準である。
この退院時FIMは長い間、ほぼ横ばいで推移してきたが、2020年頃からはやや低下傾向がみられる。在院日数が短くなり、早く退院する流れが強まっているため、退院時の機能水準がやや低くなっている可能性がある。
今後、強化体制加算を取得しようとする場合、先ほど説明したように入院日数を短くすれば実績指数は上がる。そのため、さらなる在院日数の短縮が進むことが考えられる。現在の平均在院日数は83日程度であるが、今後は80日程度、場合によっては70日台になっていく可能性もある。70日台となれば、平均で2カ月半程度ということになる。
在院日数が短縮されること自体は決して悪いことではない。入院期間が短くなることは患者にとっても医療提供体制にとっても望ましい面がある。しかし問題は、「早くても良くならない」まま退院することである。早く退院できても十分に改善していない状態であれば、望ましい退院とはいえない。
最も理想的なのは、入院期間が短くなっても機能が維持される、あるいは、さらに良くなることである。医療である以上、患者が歩けるようになるなど、より良い状態で退院できることが重要である。つまり、「早くて良くなること」が最も望ましい。
ただし、すべての患者がそのように改善できるわけではない。現実には十分に良くならないまま早く退院することになれば、患者や家族からは「追い出された」、「早く退院させられた」、「退院後はどうすればよいのか」、「放置された」などと感じられる恐れがある。したがって、実績指数48を満たすことだけを目的に、患者の不利益となるような対応をしてはならない。点数ありきではなく、患者の生活と回復を見据えた対応を考えていく必要がある。
.
退院後支援の重要性
退院間近のリハビリテーションは、生活課題への対応が中心となる。早期退院後も、在宅など日常の場で充分な訓練ができれば、退院後の生活はより円滑になる。
.
.
入院期間が短くなると、十分に良くならないまま退院するケースが生じる可能性がある。患者本人としても、「もう少し良くしてほしい」、「もう少し良くなるはずだ」と感じながら退院する場合が少なくないと思われる。そうした場合に、どのように対応するか。
今後は、退院後の生活課題について日常生活の場で訓練し、リハビリを継続していくことが必要になるのではないか。退院の早期化が進めば、入院中のリハビリテーションの内容も変わってくる。
もちろん、機能訓練も一定程度は必要だが、退院が近づく時期には生活訓練が中心となる。そこで、退院後にどのようなリハビリを提供できるかを考える必要がある。具体的には、外来リハビリ、訪問リハビリ、オンラインリハビリなどが考えられる。
ただし、これは医療保険上の整理である。介護保険も含めて考えれば、デイケア、デイサービス、通所リハビリなども加わる。また、外来リハビリや訪問リハビリも介護保険へ移行していく場合がある。したがって、入院期間が短くなるのであれば、退院後の外来リハビリ、訪問リハビリ、通所リハビリ、オンラインといった、自宅や施設に戻った後のリハビリテーションを充実させていく必要がある。
現在、外来リハビリは退院後3カ月間、毎日通うことが可能である。しかし実際には、毎日通院できる患者は多くない。また、外来リハビリは医療機関内で実施することが前提となっている。そのため、「職場復帰を目指して実際の職場で訓練したい」、「自宅や自宅周辺で買い物に行けるように訓練したい」と希望しても、現行制度では対応できない状況である。
訪問リハビリは、通院が困難な患者には適している。しかし、外来リハビリに比べると提供できる単位数が少ない。退院後3カ月間は週12単位、時間にして4時間までであり、量としては圧倒的に少ない。
この点については、もう少し制度上の検討が必要ではないかと考えている。オンラインリハビリについても現在は算定できないため、今後検討していくべき課題である。
退院の早期化は今後どうしても進んでいくと考えられる。退院が早くなること自体は悪いことではない。しかし、退院が早期化するのであれば、退院後のリハビリテーションを充実させる必要があるということである。
.
排尿自立支援/摂食嚥下回復加算
排尿自立と経口摂取は、リハビリテーションの効果を高める。今改定で要件化されたことを契機に、対象患者への積極的な取り組みが求められる。
.
.
排尿自立支援加算や摂食嚥下機能回復体制加算に関連して、トイレで排泄すること、口から食事を摂ることが、リハビリテーションにおいて重要であると評価されている。
これまで、回復期リハビリ病棟において排尿自立支援加算を算定している医療機関は約30%にとどまっていた。点数上の評価など、さまざまな事情があったと思われるが、残りの約70%の医療機関では算定されていなかった。
実際に、この加算を算定している医療機関では、入院時に尿道カテーテルが留置されていた患者の約8割が、退院時にはカテーテルを抜去できている。つまり、入院時に尿道カテーテルが入っていた患者が10人いた場合、排尿自立支援加算を算定している医療機関では約8人が退院時に抜去できていることになる。一方で、2人はカテーテルが留置されたまま退院する場合もある。
これに対して、加算を算定していない医療機関では、退院時の抜去率は58%である。一見すると相当数が抜去できているようにも見えるが、10人中5~6人程度であり、残る4~5人は尿道カテーテルを留置したまま退院している。したがって、排尿自立支援加算の算定を進めることが重要である。
排尿自立とは、トイレへ行き、トイレで排泄できるようにすることであり、尿道カテーテルを留置しない状態を目指すことである。もちろん、夜間はおむつを使用する場合や、リハビリパンツを使用する場合もある。しかし、少なくとも尿道カテーテルを抜去することが必要である。
排尿自立支援に関する研修について、当会ではすでに6、7年前から実施している。こうした算定支援は今後も継続していく。私たちが重要性を訴えてきた「経口摂取」と「トイレでの排泄」が今回の改定で大きく認められたといえる。
経口摂取についても同様である。経鼻栄養を受けている患者や胃瘻を造設している患者が口から食事を摂れるようになって退院することは極めて重要である。摂食嚥下機能回復体制加算を算定している医療機関では、約6割の患者が口から食べられるようになって退院しているというデータがある。加算を適切に算定しながら排尿自立や経口摂取への取り組みを進め、リハビリテーションの質を高めていく必要がある。
.
退院前訪問指導と医療機関外リハ
回復期リハビリ病棟のゴールは、退院後の生活である。退院前訪問指導と医療機関外リハビリを組み合わせ、生活課題を解決していくことが重要である。
.
.
今回の改定では、退院前訪問指導と医療機関外リハビリの2つが位置付けられた。退院前訪問指導では、患者の退院先である自宅を訪問する。介護保険を利用する患者、利用しない患者がいるが、自宅退院の患者全体で見ると、約25%に退院前訪問指導が実施されている。つまり、入院中に患者とともに自宅を訪問し、生活環境を確認している。
現在は、4人に1人程度の患者について、退院前に自宅を訪問している。さまざまな生活環境を確認し、どのようなリハビリテーションが必要かを検討する。患者が目標とする生活の場を実際に確認することは極めて重要である。
例えば、患者が買い物に行くことを目標としている場合には、自宅から店舗までどの程度の距離があるのかを確認する。実際にスーパーマーケットまで行き、買い物をして帰ってくる訓練を行うこともある。各医療機関ではこれまで、このような取り組みを行ってきたと思われるが、現行では実施しても加算は付かない。つまり、評価上の点数は付かないが、必要性があるため実施してきた。
今回、退院前訪問指導の実施率が1割以上であることが、強化体制加算の基準に位置付けられた。これは、患者の自宅を確認し、その人の生活の場を見ることの重要性が評価されたものだと考えている。
もう1つは、医療機関外リハビリを組み合わせることである。右のグラフに示している緑色の「1」は、1単位20分を表している。「1」「1」「1」の3つで1時間である。これまでも現行制度上、医療機関外リハビリは一定の範囲で認められていた。
今回の改定では、これに加えて新たな枠組みが設けられ、上限が緩和されて、より多く実施できるようになった。そのため、自宅訪問と医療機関外リハビリを組み合わせることも有効である。
医療機関外リハビリは病院の外、すなわち患者の生活の場で実施できる点に意味がある。患者を社会に戻していくという観点からも、自宅周辺の環境で練習することができる。さらに、公共交通機関の利用、電車やバスに乗って目的地まで行く訓練なども考えられる。医療機関外であるからこそ、実際の生活に即した訓練が可能になる。
.
回復期リハシステム(私案)
「自宅に帰ること」と「自宅で生活できること」は同じではない。入院期間の短縮化が進むこれからの時代においては、生活を軌道に乗せるまでを回復期リハビリテーションの役割として捉え、在宅リハビリも含めて包括的に拡充していくべきである。
.
.
これは私からの提言である。回復期リハビリは現在、「回復期リハビリテーション病棟」として位置付けられており、一定の成果を上げている病棟であると考えている。しかし、病棟から退院すればそれで終わりということではない。
自宅に帰ることと、自宅で生活できることは異なる。単に自宅へ帰ればよいというものではなく、自宅で安全に、かつ継続的に生活できることを担保するために退院するのである。
今後、入院期間はさらに短くなっていく可能性がある。入院期間が短縮されれば、機能回復や生活機能、すなわちADLの回復にあてられる時間も短くなる。その結果、退院時点で回復できる水準が低くなる可能性がある。
では、それをどのように補うのか。重要になるのは、退院後、自宅や施設で行われるリハビリである。退院後の生活の場でリハビリを継続し、生活の場でのリハビリを拡充していく必要がある。
そう考えると、回復期リハビリは病棟だけで完結するものではない。回復期リハビリ病棟と、自宅や施設での生活を軌道に乗せるまでの支援を連続したものとして捉え、「回復期リハシステム」として構築する。これらをワンパックとして取り組む必要があるのではないか。
また、患者の生活は、退院後の支援で終わるわけではない。その後も「慢性期リハビリ」として、生活を続けていく支援が必要である。この部分は介護保険による対応となる場合が多いと思われるが、そこまで含めて考えていかなければならない。
まとめると、生活を軌道に乗せるまでを回復期リハビリテーションの役割として位置付ける。その考え方を「回復期リハシステム」として整理していくべきではないかということを提言したい。以上である。
.
.
この記事を印刷する
2026年5月22日









