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地図だけではわかりにくい地域がある ── 田中常任理事、介護給付費分科会で

Posted By araihiro On 2026年1月17日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 令和9年度の介護報酬改定に向け、「離島・中山間地域・豪雪地帯等における各種加算等の在り方」などの調査をめぐり議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の田中志子常任理事は「地図だけではわかりにくい地域がある」と指摘し、AIの活用などを通じて「在宅にサービスが届きにくい地域のあぶり出しを行い、介護事業所の負担を減らし、次回以降の報酬改定に活用してほしい」と提案した。

 厚労省は1月16日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・東大大学院法学政治学研究科教授)の第253回会合を開催し、当会から田中常任理事が委員として出席した。
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01スライド_調査項目

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 厚労省は同日の分科会に「令和8年度調査の実施内容(案)」を提示。その調査項目として、①高齢者施設等と医療機関の連携、②離島・中山間地域・豪雪地帯等における各種加算等──の2項目を挙げ、委員の意見を聴いた。

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「中山間・人口減少地域」でも適切に提供

 ②の調査目的について厚労省の担当者は「中山間・人口減少地域においても利用者への介護サービスが適切に提供されるよう、事業者の経営の安定の観点から介護報酬において適切な評価を行うことが必要」と指摘。「3種類の加算について令和6年度介護報酬改定に関する審議報告の内容も踏まえ、離島・中山間地域・豪雪地帯等における介護サービスの提供、支援・評価の在り方を検討するための基礎資料を作成する」と説明した。

 現行の介護報酬では、離島・中山間地域・豪雪地帯等に所在する事業所の運営が非効率にならざるを得ない場合があることへの配慮として、3種類の加算(特別地域加算、中山間地域等における小規模事業所加算、中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算)が設けられている。
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02スライド_主な調査項目

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 主な調査項目は、事業所のサービス提供状況(利用者数、移動距離、移動手段、移動時間等)、収支状況、経営課題など。今年7~8月頃に調査を実施し、「9月をめどに速報値の集計を目指す」(厚労省担当者)としている。

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「中山間・人口減少地域」と同じ範囲か

 質疑で、志田信也委員(認知症の人と家族の会副代表理事)は介護保険部会の意見書に言及。「私が暮らす山形県は、県全域が豪雪地帯に指定されている」とし、「今回の調査の『離島・中山間地域・豪雪地帯等』は、介護保険部会の『中山間・人口減少地域』と同じ範囲とイメージしていいのか」と質問した。昨年12月に取りまとめられた「介護保険制度の見直しに関する意見」では、「介護給付費分科等で議論」としている。
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03スライド_意見書抜粋

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 厚労省の担当者は「当然、重なってくる部分というのはあろうかと思う」と回答。「まずは既存の加算制度として設けられている特別地域加算、中山間地域等における小規模事業所加算、中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算等の算定をベースにしながら、その状況について把握させていただく調査を実施させていただきたい」と説明した。

 長内繁樹委員(全国市長会、豊中市長)は「単に当該地域における状況調査にとどまらず、今後、介護サービス事業として実施する仕組みについて具体的な制度論を議論する際の根拠として活用できる調査となるよう、調査項目を設定していただきたい」と要望した。

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一律の報酬体系では賄いきれない

 小泉立志委員(全国老人福祉施設協議会副会長)は「豪雪地帯では運営上の不利益が非常に明確」と指摘。冬季の光熱水費、除雪のための重機や消雪設備の維持・管理費、屋根の雪下ろし等にかかる高額な費用、降雪・積雪対策費などを挙げ、「他地域にはない多大なコストが発生している」と実情を訴えた。

 その上で、小泉委員は「今回の調査項目にある『収支の状況』において、このような雪害対策費とも言える具体的な経費、項目を明示して、施設サービスを含めて調査することで、一律の報酬体系では賄いきれない実情を数値として抽出できると思うので、そのような調査を強く求める」と述べた。

 田中常任理事は「中山間地域では、既に介護事業所が撤退しているということはないだろうか。その地域が移動などを含めて生活しにくい場所かを把握しきれていないのではないか」と問題提起。以下のように述べた。

【田中志子常任理事の発言要旨】
 先ほど課長から説明のあった既存のへき地、中山間地域では、既に介護事業所が撤退しているということはないだろうか。調査をしても、既に意味がないということがないよう配慮が必要だと思っている。
 時代が変わる中で、新たにへき地相当となっている地域はないかを見る必要がある。その地域が移動などを含めていかに生活しにくい場所かを把握しきれていないのではないかと危惧している。豪雪地帯でなくても、例えば、一般の地図だけではわかりにくい高低差のある地域、公共交通機関が撤退してしまっている地域、川や谷があり、橋を渡るために遠回りしなければならない地域など、在宅支援、通所支援が見込み以上に困難な地域への配慮を考えていかなければ、撤退する地域がじわじわ広がっていくのではないか。
 今後は、診療報酬で使う、細かく人口動態を見る地図や高低差を含む地図などをAIに読み込ませるなどの手段を用いて、在宅にサービスが届きにくくなる地域のあぶり出しを行い、介護事業所の負担を減らしていただきつつ、次回以降の報酬改定に活用してほしいと希望する。

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円滑な施行に向けて準備を整える

 この日の分科会では、昨年末にまとめた「令和8年度介護報酬改定に関する審議報告」を踏まえ、介護職員等処遇改善加算の拡充や基準費用額(食費)の見直しに関する改定案を了承した。

 田河慶太参考人(健康保険組合連合会理事)は「介護従事者の確保が喫緊の課題であることを踏まえれば理解できる。12月の分科会の審議報告や大臣折衝事項に沿ったものとなっており異論はない」とした上で、「効果検証等もしっかり実施していただきたい」と要望した。

 中島栄委員(全国町村会行政委員・茨城県美浦村長)は、「介護保険財政は非常に厳しく、保険料の更なる増嵩も懸念されるので、国の更なる支援が必要」と述べた。また、処遇改善加算の拡充による事務負担について「町村には小規模な事業者が多いため、配慮していただきたい」と求めた。

 田中常任理事は「介護医療院では処遇改善加算の取得率が低い」と改めて指摘し、今後の課題を挙げた。

【田中志子常任理事の発言要旨】
 期中での報酬改定に感謝申し上げる。介護医療院では、処遇改善加算の取得率が低いことが課題である。以前から申し上げているように、医療部門との協調を取らなければいけない同一法人の場合には、診療報酬と介護報酬と協調し、足並みを揃えることが非常に重要になる。同一法人の同一職種に同じような処遇が行えるよう、課をまたいで相談していただくよう引き続き、お願いしたい。

 報告書の取りまとめを受け、厚労省老健局の黒田秀郎局長が挨拶。「昨年9月以降、本日を含めて7回、精力的にご審議をいただき、本日、改定案に関する答申をいただいた」と謝意を表し、「6月の施行に向けて告示・通知の発出などを進め、円滑な施行に向けて準備を整えていきたい」と述べた。

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