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「中山間地域は特殊ではない」── 橋本会長、介護保険部会で

Posted By araihiro On 2025年9月9日 @ 11:11 AM In 会長メッセージ,協会の活動等,審議会 | No Comments

 介護保険制度の改正に向け、地域の実情に応じた体制などを議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の橋本康子会長は地域の類型の考え方について「中山間地域は特殊ではない。都市部のほうが特殊な状態になってきているのではないか」と指摘した上で、「そうした状況を踏まえた介護報酬の体系などをつくっていくことが必要」との認識を示した。

 厚労省は9月8日、社会保障審議会(社保審)介護保険部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学理事・法学学術院教授)の第124回会合を開催し、当会から橋本会長が委員として出席した。
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 厚労省はこれまでの議論を踏まえ、同日の部会に「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築」と題した資料を提示。その中で、「地域の類型の考え方」など6項目の論点と、それに対する考え方を示し、委員の意見を聴いた。

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中山間・人口減少地域は「柔軟な対応」

 論点①(地域の類型の考え方)では、「全国を『中山間・人口減少地域』、『大都市部』、『一般市等』と主に3つの地域に分類して、テクノロジー等も活用し、その地域の状況に応じたサービス提供体制や支援体制を構築していくことが重要」と指摘。このうち「中山間・人口減少地域」については、「柔軟な対応を講じていくことが必要」とした。
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 その上で、「サービス需要が減少する『中山間・人口減少地域』については、サービス提供の維持・確保を前提として、利用者への介護サービスが適切に提供されるよう、新たな柔軟化のための枠組みを設ける必要があるのではないか」との方針を示した。
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 また、「人口密度が希薄であることや交通が不便である等の中山間地等を対象地域とする特別地域加算の対象地域を基本としつつ、更に、人口減少や地域の事情等も勘案してその対象地域の拡充が考えられないか」と提案した。

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類型の変化とサービスレベルの変化と

 質疑で、井上隆委員(日本経済団体連合会専務理事)は「地域区分を設けて、状況に応じて体制を構築していくという方向性については賛同する」としながらも、「今後の介護保険制度の大きな方向性を示す重要な分岐点になる」と強調。「この検討を今後具体化していくにあたっては、この部会あるいは関係者のみならず、利用者あるいは将来の利用者を含めて幅広く理解を求めながら検討を進めていく必要がある」との見解を示した。

 その上で、井上委員は「現時点で具体的にどういう地域がどの類型に属していくのか。さらには、それが5年後、10年後にその類型からどういうふうに移動していってしまうのか。実際のサービスのレベルは変化するのか。保険料、利用料についてどのような変化があるのか」などの課題を提示。「そうした具体的な情報の提供が必要ではないか。この体制を進めた場合に地域ごとに保険財政がどうなっていくのか、あるいは人材の確保が可能なのかという検証も必要だ」と述べた。

 津下一代委員(女子栄養大学特任教授)は「2040年(検討会とりまとめ)を踏まえて、まずは第10期で中山間地域に焦点を当てた取り組みをされることには賛同」とした上で、「地域の状況がどんどん変化していく中で、どのように地域を捉えていくのかが重要」とし、「この類型は3年ごとに決定されていくようなイメージでよろしいか」と尋ねた。

 厚労省老健局総務課の江口満課長は「時間がたてば中山間・人口減少地域に該当していなかった地域が該当することは当然想定されるので、必要に応じて、そこは見直していくということだと思うが、3年ごとの計画の単位で見直すのか、もう少し細かく見直すのかは今後の議論」と答えた。

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柔軟性の確保も重要だが、「悩ましい」

 論点②では、「地域の実情に応じたサービス提供体制の維持のための仕組み」として、「管理者や専門職の常勤・専従要件、夜勤要件の緩和」「包括的な評価の仕組み」などを挙げた。
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 質疑で、及川ゆりこ委員(日本介護福祉士会会長)は「サービス提供体制を維持することが難しいことを踏まえ、配置基準の緩和を進める発想も理解はする」としながらも、「サービスの質の確保の観点や介護職の負担の観点を踏まえると極めて悩ましい。管理職員等の配置基準の緩和についても同様」との認識を示し、「例えばスキルの高い介護福祉士の配置など、モデル的な取り組みを通した効果検証をした上で対応方針を定める必要がある」と述べた。

 鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は「介護保険サービスである以上、保険料負担や利用者負担をする方が納得できる仕組みであること、対象地域に住んでいる方やサービスを提供する方とそうでない地域の方、いずれにとっても理解される仕組みであることが重要」と指摘。「一定の柔軟性の確保も重要である一方、例えば対象地域の妥当性をどう確保するか」との課題を挙げた。

 染川朗委員(UAゼンセン日本介護クラフトユニオン会長)は「中山間・人口減少地域について当該枠組みの対象となる地域の明確化や当該枠組みを拡大していく方向性については賛成」とした上で、「その際、拡充対象の要件となる基準や、同一市町村に一般市と中山間・人口減少地域が混在するようなケースにおいて、市町村未満の地域ごとの区分を明確化する客観的基準を可能な限り具体的に明示していく必要がある」と述べた。

 石田路子委員(NPO法人高齢社会をよくする女性の会副理事長)は「中山間・人口減少地域は限られた地域ということで、基準該当サービスではなく、枠組みを柔軟化していく論理で説明されているが、今後そのエリアがどんどん拡大していく可能性が高い」と指摘。「柔軟化が一般的にならないか。サービスの質を担保できるのか」と懸念し、「全国でサービスの質の格差が拡大してしまうことがあってはならない」と主張した。

 橋本会長も同様の認識を示した上で、都市部と地方における経営状況の違いなどに触れながら、適正化や柔軟化の流れに「巻き込まれてしまって経営がすごく苦しくなっているところもある」と指摘した。

【橋本康子会長の発言要旨】
 論点①「地域の類型の考え方」について。全国を3つの地域に分類する。それをどこにするのか、人口によって分けるのか、いろいろな考え方あると思うが、大体どこに、どういうふうにするか、それを明らかにすることが必要だと思う。
 その際、先ほど石田委員もおっしゃっていたが、今、日本の国では、どちらかというと中山間地域が特殊ということではなくて、一般市もそうだが、そちらが一般的であって数的にも多いと思う。都市部のほうが特殊な状態になってきているのではないか。そうした状況を踏まえた診療報酬や介護報酬の体系などを考えて、つくっていくことが今後必要ではないかと思う。
 続いて、論点②の6ページ。今のことを踏まえると、例えば、ここにある「報酬」のところに「全国一律の介護報酬」とあるが、全国一律の介護報酬を全国一律ではないようにすること、地域と都市部を分けるということは、いろいろな問題も発生してくるというのは理解しているが、やはり、ここまで都会と地域との差がすごく出てきているというところを考えると、全国一律の報酬体系というのが果たして今後、続けていけるのかどうかというところも考えていかなければいけないのではないかと思う。
 例えば、都市部では競争の激化によって経営が成り立たない。地方などでは高齢者が減少する。患者さんやサービス対象者が減少したりスタッフが減少したりすることによって施設等が成り立たない。このように原因が全く違ってきているので、そうしたことも考えなければいけない。例えば前回の改定では、高齢者施設について頻回に訪問診療が行っていることに対して評価を適正化することをされた。そういう議論があるのはいいのだが、それが一律だと、地方の訪問診療にまで、また介護報酬など、そうした報酬に影響して、それに巻き込まれてしまって経営がすごく苦しくなっているというところも現に出てきている。そうしたことは考えていかなければいけないと思う。

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市町村に財源の余裕があるのか

 論点③では、「包括的な評価の仕組み」のメリットなどを紹介。「出来高報酬と利用回数に左右されない月単位の定額報酬(包括的な評価の仕組み)を選択可能とするような枠組みを設けることが考えられないか」と提案した。慎重論が多かったが、「選択制であれば賛成」との意見もあった。
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 論点④では、「介護サービスを事業として実施する仕組み」として、「市町村が、その実情に応じて、介護サービスを、給付に代わる新たな事業(新類型)として、介護保険財源を活用して実施できる仕組みを設けることが考えられないか」と提案した。
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 江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「人口規模の小さな市町村も多々あり、今後増加してくるため、市町村の人材や財源の確保が可能かどうか、慎重な検討も求められる」と指摘。今後に向け、「新たな地域医療構想に呼応する介護、障害者福祉サービスの構想や医療介護連携の議論を行う協議の場の常設をこれまでも要望してきているが、そうした協議の場で地域の関係者がしっかり協議することが重要」と述べた。

 橋本会長は「果たして市町村に活用できる財源の余裕があるのか」と疑問を呈した。

【橋本康子会長の発言要旨】
 論点③について、7ページ。先ほどから他の委員もおっしゃっているが、包括的な評価は質の低下のほか、利用者にとって適正化という感覚が乏しくなるというデメリットが挙げられると思うので、それも考えていただきたい。
 論点④について、8ページ。市町村からの財源を活用できるというところがあるが、果たして、その市町村に活用できる財源の余裕があるのか。地方などは特にそうだが、そうしたところが疑問なので、そのあたりも考えていただきたいと思っている。

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医師の働き方改革も見直す必要がある

 次期制度改正に向けた議論は昨年12月末から開始し、これまで8回開催。この日の議事の冒頭で、菊池馨実部会長は「前回は現場の取り組みについてヒアリングを実施し、主な検討事項についての議論をほぼ一巡した。今後は冬に向けた取りまとめに向けて具体的な議論を深めていく」と伝えた。

 前回7月28日の会合などで、菊池部会長は「地域医療構想に介護との連携まで入ってきた。医政局からぜひ(医療法等改正)法案のお話を伺わせていただきたい」と事務局に要望していた。
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 厚労省は同日の部会に「医療法等の一部を改正する法律案の概要」を提示。厚労省医政局総務課の水谷忠由課長が「在宅医療や介護との連携」など同部会に関連する事項について説明し、委員の質問に答えた。

 橋本会長は「今回のテーマからは外れるかもしないが」と断った上で、医師偏在是正に向けた総合的な対策に関連して発言。「医師の働き方改革も少し見直す必要があるのではないか。若い医師の意見をもっと聞くべきではないか」との考えを示した。

 水谷課長は「総合的な診療能力を持つ医師の魅力を発信し、それに対する研修、さらにはOJTで学ぶことができるような診療の場を提供するなど、さまざまな観点から取り組みを進めてまいりたい」と説明した。

【橋本康子会長の発言要旨】
 今回のテーマからは外れるかもしないが、「医療法等の一部を改正する法律案の概要」の2番。「改正の概要」の2番目「医師偏在是正に向けた総合的な対策」について、この議論とは違うと思うが、医師の働き方改革について。 
 実際、特に若い先生方からのご意見をお聞きすると、今の医師の働き方改革、現状の働き方に満足しているとはとても言えない状況にあるのではないかと思う。若い先生たちがよく言うのが、「スキルアップをしたり経験をしたりする機会がすごく少なくなった」ということ。今、元気なうちにしっかり働いて、いろいろな経験を積んで、いろいろなスキルアップをしていきたいが、その時間がないという。上の先生から「もう6時になったから帰りなさい」と言われてしまう。
 そのため、実際に影響するのは、在宅医や、かかりつけ医の質の問題になってくると思う。また、地域の開業医などに興味をもったり、もともと実家がある出身地に戻りたいと思ったり、地域医療などに興味があったとしても、そこに戻って、自分1人で、あまりたくさんの医師がいる中ではない、少ない医師のところでやっていく自信がないという。地域医療には興味があるが、自分のスキル的に自信がないので帰れないという声が多く聞かれる。今回の議論とは少し違うかもしれないが、医師の働き方改革というところも少し見直す必要があるのではないか。実際、その影響を受けている若い先生方の意見をもっと聞くべきではないかと思う。

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【厚労省医政局総務課・水谷忠由課長の発言要旨】
 まず医師の働き方改革については、2024年4月から新しい時間規制が施行になっている。そうした中で、橋本委員からご指摘があったような、研鑽をきちんとできるようにということで、C1・C2という区分を設けて対応している。ただ、そこで言う「研鑽」というものについて、どういうものが研鑽に当たるのかということ。これは現場の状況によって、さまざまな解釈がある。私どもとしては、この「研鑽」というものに当たるもの、当たらないもの、それは医療機関側の管理者から指示があったかどうかということを基本に判断するということで解釈を示している。私どもとしては、もちろん医師の過重な労働に、この医療提供体制が依拠する形であってはならないと思っている。 
 一方で、必要な研鑽はきちんと積んでいただきたいと思っている。そこのバランスということで、この「研鑽」の考え方を示したりしながら引き続きバランスをうまく取っていきたいと考えている。
 それから、2点目におっしゃった「地元に戻って必要な医療を提供したい、でも」ということでは、今、医師のキャリアがさまざま考えられる中で、いろいろなニーズがあると思っている。私どもも、医師の偏在対策については、昨年末に総合的な対策パッケージということで、いわば対策のメニューを示している。この中には、具体化するためには予算措置が必要なもの、法改正が必要なものなど、さまざまある。まだ取り組みが緒に就いたばかりというところもあるが、今おっしゃっていただいたような医師のキャリアの中で「総合的な診療を担いたい」というニーズは、決して若手の方だけではなくて、中堅あるいは、それ以上の医師にもあると思う。
 医師偏在対策というと、どうしても若手医師を中心としたものだけを思い浮かべるが、中堅、シニア世代を含めた全ての世代を対象とした施策をとるということを基本理念として、総合的な診療能力を持つ医師養成の推進事業では、地域医療を担う総合的な診療能力を持つ医師の魅力を発信し、それに対する研修、さらにはOJTで学ぶことができるような診療の場を提供する取り組みを進めている。橋本委員がおっしゃったことは、何か1つの施策で対応できるということではないと思う。私どもとしては、さまざまな観点から、医師偏在あるいは医師の働き方改革の対策を講じる中で取り組みを進めてまいりたい。

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介護従事者の負担とならないように

 このほか同日の部会では、前回会合で時間不足のため資料説明のみにとどまった「介護被保険者証の事務や運用等の見直し(案)」などを改めて示し、了承を得た。
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 現在、65歳到達時に全被保険者に対して交付している介護被保険者証については、「要介護認定申請時に紛失しているケースがある」とし、「要介護認定申請時に介護被保険者証を交付する対応に変更してはどうか」としている。

 自治体関係者からは「これまで通り紙ベースで交付するのか、介護情報基盤の構築を進めていく間の限定的な見直しであるのか、基盤が整備された後も含めた対応とすることになるのか、その方向性を明確に示していただきたい」との要望があった。また、労働組合の委員から「マイナンバーカード取得・管理に当たって現場の介護従事者の負担とならないよう進めていくこともお願いしたい」との意見もあった。

 橋本康子会長も現場の負担を懸念し、「いろいろな情報を速やかに把握できるような状態になることが大切」と指摘した。

【橋本康子会長の発言要旨】
 医療との連携を考えていただきたい。マイナンバーカードから情報を収集するときに、例えば既往歴や手術歴、現在服用している薬の情報などが入っている。それらを引っ張り出そうと思うと、すごく手間がかかる。いろいろな情報がたくさん入っているのはいいが、患者の履歴は長いので、それが速やかに把握できるような状態になることが大切だと思う。
 せっかくマイナンバーカードがあって情報がたくさん入っている。診療情報提供書を確認したり電話で問い合わせをしたりするようなことが少なくなるように活用していければいい。
 また、災害時にはカルテそのものがない場合が多い。これは保険証を持っていない場合と同じこと。災害時はマイナンバーカードを持っていない人が普通であり、名前だけで見られるような仕組みを、特別なときでいいので、そうした工夫も災害時には特に必要だと思う。

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