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「基本料をしっかり付けて基準の緩和を」── 池端副会長、入院医療の議論で

Posted By araihiro On 2025年7月24日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 令和8年度の診療報酬改定に向け、「入院(その1)」をテーマに議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は医療機関の厳しい経営状況を訴えた上で「基本料をしっかり付ける。そして人員の基準をある程度、緩和する。この2つしか即効性がある対応はない」と述べた。

 厚労省は7月23日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所特任教授)総会の第613回会合を都内で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 次期改定に向けた議論は前回7月16日から「その1シリーズ」に入った。前回は外来医療について、今回は「入院(その1)」に示された課題や論点を踏まえて意見を交わした。

 資料は表紙を含めて120ページ。全体の構成は、▼1.入院医療を取り巻く現状について(P2~40)、▼2.入院医療等について(P41~120)──となっている。
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01スライド_P41

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 このうち、2の「入院医療等」は、(1)急性期入院医療、(2)包括期入院医療、(3)慢性期入院医療──の3項目。論点は、P70(急性期)、P99(包括期)、P120(慢性期)に掲載されている。

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医療機関の経営を「治し支える」改定が不可欠

 質疑の冒頭、診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「まず本日の『その1』の議論において最も強調しておきたいことは、病院経営が過去に経験のない危機的状況にあること」と切り出し、「7割の病院が赤字であり、冬までもたない病院もあるだろう。入院患者さんを抱えたまま、ある日突然、経営破綻する病院が現実にあるという異常事態を生じている」と伝えた。

 江澤委員は「機能分化と連携の強化、あるいは医療機関の機能に応じた評価といった考え方もあることも十分承知している」としながらも、「これらの取り組みについては、さまざまな事情を抱えた地域の医療機関がしっかりと対応できるように、1回の改定ではなく複数回の改定により、十分な時間をかけて進めるべきもの」との認識を示した。

 その上で、江澤委員は「次回診療報酬改定においては、医療機関、病院や有床診療所の経営をまさに『治し支える』改定が不可欠であり、これは強く要望したい」と強調し、各論点について意見を述べた。

 江澤委員に続いて、池端副会長が発言。「医療機関機能を伸ばしていくために、どういう診療報酬の在り方が大事か」と問題提起した上で、急性期・包括期・慢性期の課題や論点について意見を述べた。池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

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入院医療を取り巻く現状について

[池端幸彦副会長]
 入院医療について、まず全体を通しての話が江澤委員からもあったが、私からもコメントしたい。今回の改定の資料に示されているように、新たな地域医療構想に寄り添う対応をいかにしていくかということ。そして、医療機関機能をいかに伸ばしていくか。そのために、どういう診療報酬の在り方が大事か。私も、そういう議論は非常に重要だと思っている。

 ただ、効果的・効率的な医療提供体制をするための機能分化、連携を図るには、そもそも医療機関が存続していることが大前提になる。江澤委員が述べたように、近々の状況では、今、病院全体の7割を超えて8割近くが赤字病院ということで大変な危惧を覚えている。

 私自身、福井県の医師会を預かる者として感じている。福井県医師会員の先生方のための金融機関である福井県医師信用組合には、「とりあえず、つなぎの融資をなんとかしてほしい」という声が頻繁に寄せられており、私のところにも聞こえてくる。この状況が続けば、おそらく年内はもたないのではないかという医療機関を数件、私自身も把握している。これほどの危機感がある状況であることを、この場でお伝えしておきたい。

 確かに、連携や分化等の議論をするのも非常に重要だが、その前に医療機関が潰れてしまって、ある日突然なくなってしまってはいけない。そうしないために、やはり大事なことは、基本料をしっかり付ける。そして、人員の基準をある程度、緩和する。この2つしか即効性がある対応はないと思うので、そこをベースに機能分化・連携を考えていきたいと思っている。そういう点をご理解いただきたい。その上で、各論について私からも簡単にコメントさせていただく。

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急性期入院医療について

 
 まず、70ページの「急性期入院医療における課題と論点」について述べる。
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02スライド_P70

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 急性期入院医療費に関しては、前々回の改定から引き続き重症度、医療・看護必要度について、かなり厳しめの見直しが行われている。特に内科系で高齢者を支えている病院については、急性期も回復期も慢性期もそうだが、そこに対する評価が非常に厳しい。

 そのため、内科系の重症度に対する見直しをなんとか考えていただかないと、その重症度をクリアできないために医療が提供できない。そんなことが起きてはいけないので、ぜひ全体を通じて考えていただきたいと思っている。

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包括期入院医療について

 86ページ(各病棟における入院患者数上位の疾患)、88ページ(地域包括ケア病棟と同一の医療機関で算定されている入院料)にあるように、地域包括ケア病棟と地域包括医療病棟との差があるのか、ないのか。地域包括医療病棟の在り方について、しっかり議論しなければいけない。
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04スライド_P88

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 「包括期」において、地域包括医療病棟は地域包括ケア病棟の亜系なのか。あるいは、急性期の亜系として地域包括医療病棟を考えるべきなのか。急性期寄りなのか包括期寄りなのか。そのコンセプトをしっかり議論して、その上で、いろいろな規制緩和等が必要になってくるのではないかと思うので、その辺の議論ができればいいと思っている。
  
 回復期リハビリテーション病棟に関しては、98ページに入棟時・退棟時FIMの年次推移が示されている。FIM利得が少し低い患者をどんどん入れているのではないかという議論があったが、その傾向は止まってきた。
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 回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟におけるリハビリの在り方についても、しっかり議論して、お互いにどういう生き残りを図っていくか。あるいは、差別化するのか。あるいは、少し合わせていくのか。そういう議論も必要になってくるのではないか。もちろん、回復期リハビリテーションは専門機能として絶対に必要なので、それをなくすわけではないが、どのような調整が可能なのか。そういう議論も必要ではないかと思っている。

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慢性期入院医療について

 
 療養病床に関しては、前回の改定で医療区分がかなり“ガラガラポン”になったが、なんとか皆さん、それぞれ工夫しながら生き残りを図っており、大きなダメージを受けずに済んでいるのが現状だと思っている。
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 中心静脈栄養については、先ほど事務局から「報酬のルールの変更があったが、令和4年と比べて大きな動きはなかったと考えている」との説明があった。見ておわかりのように16%ぐらいにとどまっている。
 
 かつては、「無理やり中心静脈栄養にして医療区分を上げているのではないか」と疑うような意見もあったが、決してそうではなくて、いろいろな状況で、経管栄養ができない場合でも栄養さえしっかり入れれば、また在宅に帰れる可能性がある。あるいは、地域に戻れる、介護施設に帰れる可能性がある。そういう方々に、しっかり中心静脈栄養をやって、そして、できるだけ口から食べられるようなケアをしながら改善を目指している。

 そういう中で、どうしても、それができない方々が1割、また1割5分ほど残るということに対して、これを、もし「ノー」と言われてしまうと、かなり生命の危機につながるので、ここの議論はしっかり気をつけながらしていかなければいけないと思っている。
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 次に、療養病棟における医療区分2・3の該当割合について。療養病棟入院料1では、医療区分2・3に該当する患者割合「8割以上」が圧倒的に多くなっている。さらに、9割、10割の病棟もある。

 ただ、1つだけ言っておきたいのは、医療区分は10割がベストであるわけではないということ。療養病棟の医療区分というものは、例えば、ハンドルで言えば、“遊び”の部分がないと、うまく運営できない。2・3の該当患者割合が高ければいいとか、9割、10割になればいいというものではないことを指摘しておきたい。

 各論についての意見は以上であるが、全体の議論としては、冒頭で述べたように、入院医療を守ってほしいということを再度強調したい。

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医療・介護連携等について

 先ほど伊藤徳宇委員(三重県桑名市長)から非常に重要なご指摘をいただいた。救急患者の約1割が介護施設からの救急搬送だということ。これに関しては、前回の同時改定の中で、在支病あるいは地域包括ケア病棟等を中心に介護施設と連携を図るために、いろいろな加算をつけ、あるいは介護施設の場合には施設基準化して、それを義務化している。ここが進めば、かなり解決してくるのではないかと思っている。

 ただ、経過措置が2年間あるので、まだ、そこまで進んでいないところもあるかと思う。これについては、現在、この加算の算定状況がどの程度進んでいるのかなど、それがわかる資料があれば用意していただいて、もし進みが悪ければ、さらに何らかの方法で後押しするようなことも必要になってくると思う。今後、事務局で資料が出せるようであれば、ご準備いただければと思う。

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